2011年11月21日月曜日
☆ こんな映画は見ちゃいけない!
「アントキノイノチ」 です。<p>遺品に焼き付けられた故人の思い、それは残された者に思い出となっ<br>て直接語りかけてくる。愛した記憶、愛された記憶、忘れていた場面<br>が脳裏によみがえる時、人は命のつながりを感じるのだ。一方で、無<br>念をいだたまま死んだ人、過去を共有する血縁者のいない人もいる。<br>それでも、他人に覚えていてもらうことで、確かに存在したという証<br>を残す。物語は、心が壊れた青年が遺品整理の現場で働くうちに、す<br>べての人間は誰かと繋がっていると気づいていく過程を描く。絶望と<br>死の影に押しつぶされそうなゆっくりとしたテンポの映像からは、繊<br>細な主人公の喪失感が重くのしかかってくるようだ。<p>高校時代、親友の自殺で精神のバランスを失った杏平は遺品整理業者<br>で働き始める。ハエやゴキブリがわき、ごみが散乱する孤独死のアパ<br>ートを片付けるうちに、生きるとは何かを考え始める。<p>誰にも看取られずに逝った人々は、何らかの理由で家族と音信不通に<br>なった人ばかり。だが、遺族に憎まれ遺産すら引き取りを拒否される<br>人でも、本当は家族に会いたい気持ちを引きずっていた事実がモノを<br>通じて語られる。杏平はそういった経験を積むうちに、己の人生もま<br>た両親や友人と確実に影響し合っているのを学んでいく。<p>特に老人ホームで息を引き取った女性の夫が留守電のテープを繰り返<br>し聞いて妻の願いを知るシーンは、人は死んでも苦楽を共にした人の<br>胸の内で輝き続けることを思い出させてくれる。<p> お勧め度=★★★*(★★★★★が最高)<p>