2012年9月15日土曜日

吉永小百合、沖縄から北へ日本縦断…映画「北のカナリアたち」キャンペーン


女優の吉永小百合(67)が14日、沖縄・那覇市で、新作の主演映画「北のカナリアたち」(11月3日公開、阪本順治監督)のキャンペーンを本格始動させた。
今作で共演した沖縄出身の満島ひかり(26)も同行。
日本最北端の島を舞台にした作品を、南の島から発信し、日本を縦断。
全国25か所を回る予定だ。


吉永が映画のキャンペーンで沖縄を訪れるのは「北の零年」(2005年)以来。
「ひめゆりの塔」撮影後、パスポート持参で初めて沖縄に行ったのが日本返還の4年前だ。
それらが思い出され、地元メディアには「まだ一度ものんびり遊びに来たことがありません」と明かし、いまも基地の問題などで揺れていることに「抱える大変なことを私も、もっと考えないと」と話した。


「自分の役を語るのは気恥ずかしい」が本音だが、吉永は撮影時に注いだエネルギーと同じくらいの労力をキャンペーンにもつぎ込む。
「この作品は最初はサスペンスだと言われました。
でも、撮るうちに人とのふれあい、やさしさが全面的に出ていると思います」と内容の"方向転換"を示唆。


吉永と満島は元教師とその教え子で共演。
「お会いするまで『私、吉永小百合よ!』という感じかと思いましたが、全然違った。
優しくて気を使われて。
私よりもずっと心が澄んでおられた」。
満島は目を輝かせながら吉永について語った。


大スターの謙虚な姿勢に感動した生徒役の全員が、いまでは吉永に心酔しサユリスト化。
今作で重要な合唱シーンで指揮を担当した吉永は「(生徒たちが)真っすぐにこちらを見る目を見て、あれほど胸がキュ~ンとなったのは映画の仕事をしていて初めて」という体験もした。


これから日本を縦断し、全国25か所を精力的に回る。
「気恥ずかしくても、一人でも多くの人に見てもらうためには伝えていかないと」と気持ちを奮い立たせる。
沖縄に台風直撃の予報で空模様が刻々と怪しく変化する中、"晴れ女"を自負する吉永の動くところは青空だった。


◆「北のカナリアたち」 湊かなえさんの「往復書簡」が原案。
北海道の離島で小学校教諭だった、はる(吉永)は、ある事故で島を去る。
が、最後の教え子の一人が殺人事件の重要参考人となったことを知り、その当時の教え子たちを訪ねる旅に出る。

こんな映画は見ちゃいけない!(9/15)

本日、とりあげる作品は

「天地明察」 です。

夜空は暗く、星はきらめきを失っていなかった。まだ、肉眼で天体を
観測していた時代、正体が分からずとも規則正しく光を発する星々に
思いをはせる男が、法則性を利用して新たな暦を製作する。その過程
で、緯度を算定し、太陽と月の運行を記録して一年の長さを決めてい
く行程は壮大。度々起きる日蝕・月蝕の予想を通じて暦の正確さを競
う姿はスリリング。映画は江戸時代初期、囲碁指南役から天文方にま
で上り詰めた主人公の気の遠くなる苦難の道を再現する。

会津藩士・算哲は藩主から日本全国をめぐって北極星の観測を命じら
れ、思慕を寄せる私塾の娘・えんを江戸に残して行脚に出る。その後、
今度は暦の作成の総責任者に任命され、観測所と部下を与えられる。

巨大な観測機材を馬車で運び、各地で組み立てて北極の角度を知ろう
とする技師たち。道中の余興で、歩数で測った観測地までの距離と方
角で北極星の位置を予測するが、算哲は最初のトライで見事に的中さ
せ先輩たちを驚かせる。また、天才和算家・関孝和に送った設問の根
本的な誤りを指摘されると急ぎ江戸に手紙を書いて訂正する。そのあ
たり算哲の几帳面で律義な性格は、天体観測・暦作りという高い精度
を求められる作業に向いていたことが描きこまれる。

時間を忘れて熱中できる異常な集中力こそが未来を切り開く研究者の
共通点。星空と数式に心を奪われた男の人生は、天空を彩る星のごと
く美しいと思える作品だった。

お勧め度=★★★*(★★★★★が最高)

「天地明察」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120608

を参考にしてください。

本日はもう1本

「わたしたちの宣戦布告」 です。

泣きやまない、すぐに吐く、歩き始めるのが遅いetc。初めて子を持っ
た親ならば"標準"とされている発育と少しでも違うと過剰に気にし
てしまう。そして彼らの予想よりはるかに深刻な現実が待ち受けてい
たら…。カメラは生後18カ月のわが子に悪性の脳腫瘍が見つかった若
い夫婦の苦悩と格闘を追う。己の無力に苛立ち、やり場のない怒りを
呑み込みながら、夫婦ふたりは協力し合って運命を受け入れ乗り越え
ようとする。タクシーから街の夜景を眺めるふたりがいつしか愛のデ
ュエットを口ずさむという、場違いだが強烈に印象に残るシーンに、
長い戦いに勝つ強い意志が強調されていた。

ロメオとジュリエットの間に生まれた息子・アダムは新生児のころか
ら異常が多く、ある日、医者の勧めでCTスキャン検査を受けると脳腫
瘍が見つかる。アダムは脳外科の名医に執刀してもらうため入院する。

手術場所を議論したり、高い柵のベッドからアダムを救いだしたり、
病院で感情的になるジュリエットをロメオが諌めたり、空きベッドを
ナースと交渉したり、名医の担当を頼んだりと、幼い患者の両親が直
面する様々な問題がリアルに再現される。アダムの頭にメスが入れら
れる以上、ロメオとジュリエットは悲嘆に暮れるより前進を選ぶのだ。

しかし映画はあくまで悲劇とは一線を引き、いつのまにか親子3人の闘
病記がスリリングでコミカルなエンタテインメントに昇華されていく
あたり、新鮮なエスプリを感じさせてくれる。

お勧め度=★★★*(★★★★★が最高)

「わたしたちの宣戦布告」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120614

を参考にしてください。

本日はもう1本

「そして友よ、静かに死ね」 です。

親友と信じて疑わなかった相棒が、今は裏切り者として組織と警察に
追われている。彼を助けられるのは自分しかいないと悟った時、男は
身を引いたはずの血なまぐさい世界に戻っていく。友情か己の人生か
の選択を迫られ、友情を選び再び手を汚す決意をするまでの苦悩がリ
アルだ。そして流血の果てに相棒と再会したにもかかわらず、嬉しさ
や懐かしさよりも厄介事に巻き込まれてしまった不満を呑み込もうと
する表情が印象的だ。

引退したギャングのボス・モモンの縄張りにかつての相棒・セルジュ
が戻り、張り込み中の警察に逮捕される。初めは無関心を装うモモン
だが、部下に突き上げられセルジュの奪還を黙認、隠れ家に匿う。

スペインの麻薬密売組織につけ狙われているセルジュを預かったこと
で、モモンは麻薬組織を敵に回す羽目になる。刑事に嗅ぎまわられ組
織の殺し屋の影が忍び寄る中、モモンの身辺はあわただしくなってい
く。その渦中、幼少のころいじめられていたところを救われ、チンピ
ラ時代は一緒に臭い飯を食い、街のボス一味を一掃してからは命を張
って強盗を繰り返したセルジュとの思い出が蘇る。だがそれは次第に
モモンの判断を鈍らせていく。

仲間同士の信頼がすべての裏社会の掟、いくら足を洗ったつもりでも、
過去という烙印は永遠に消えない。モモンを演じたジェラール・ラン
バンはあくまで抑制の効いた演技で彼の感情を表現する。

お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

「そして友よ、静かに死ね」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120711

を参考にしてください。

本日はもう1本

「人生、いろどり」 です。

さびれゆく山間部で細々とミカンを栽培する人々。不作の年は野菜を
植え生活の足しにしようとするが、中国産に押されて将来の展望は暗
い。そして、独居老人、老々介護、農業の衰退、若年人口の流出も止
まらず残っているのは年寄りばかりといった現実。映画は、そんな問
題だらけの農村で葉っぱを商品にして現金収入の道を開いた老人たち
の夢と希望を丁寧に追う。アイデアとやる気があれば年齢など関係な
い、むしろこれ以上失うものがないという開き直りが彼女たちを大胆
にさせ、それまでと違った生き方を模索してく過程が楽しく頼もしい。

農協職員の江田は、葉っぱで新たなビジネスを展開しようと提案、賛
成してくれたみかん農家の薫と雑貨屋の花恵、彼女たちの幼なじみの
路子を加えて、共に売り物になる葉っぱを研究する。

最初は「いまさら意味はない」と言っていた路子も、いつしか偽りの
仮面を脱ぎ捨てて協力する。一方、古臭いタイプの農夫でくだらない
プライドにすがりつく薫の夫・輝雄はあくまでも妻が始めた事業に反
対する。この2人のキャラクター設定により、単なる「地方の村おこし
映画」とは一線を画し、物語は奥行きの深い人間ドラマとしての味わ
いを出している。

彼女たちが働いて手にしたカネで髪を手入れし洋服に身を包んで街を
颯爽と歩く姿は、女が欲しいのは "自分で人生にいろどりを添える力"
だと雄弁に物語っていた。

お勧め度=★★★*(★★★★★が最高)

「人生、いろどり」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120713

を参考にしてください。

本日はもう1本

「スリープレス・ナイト」 です。

駆け引きと裏切り、知略と暴力が渦巻く夜の巨大飲食遊興施設、ギャ
ングと捜査員を相手に、逃げ、隠れ、交渉し、反撃する。映画はそん
な主人公の一挙手一投足に密着し、彼の怒りと焦燥、苦痛と疲労そし
て愛と憎悪を荒々しく激しい息遣いと共に再現する。人質を取られて
いる弱みから強硬な手段には出られない、人ごみに紛れ、時間を稼ぎ、
なんとか解決策を模索する過程はスリルにあふれ、極限まで肉体を駆
使した格闘シーンはリアルな痛みを伴っていた。

ギャングからコカインを強奪した刑事のヴァンサンは、逆に息子を拉
致されて、コカインの返還を迫られる。ヴァンサンは取引場所トイレ
の天井裏に一旦コカインを隠すが、それを女刑事が持ち去ってしまう。

頼れるのは己の経験と判断力だけ、疲れ果て傷だらけになりながらも
考え、闘い、息子を探す。しかしヴァンサン自身も悪党であることに
変わりない上、善良な不法移民を警察バッジで脅してこき使う小賢し
さをみせるなど、見る者の感情移入を拒む。

ダンスフロアのほかにもレストラン、バー、カジノ、ビリヤード場ま
で設けられた建物内部は迷路のように渾然と入り組み、全体像が把握
できない。また大勢の客や従業員がヴァンサンの進路を邪魔するが、
時に身を守る盾にもなる。もどかしくもあり、事を有利に展開したり
もする舞台設定が非常にユニークで、その中で一晩中走り続けるヴァ
ンサンのタフネスをスピーディに描き切っていた。

お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

「スリープレス・ナイト」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120714

を参考にしてください。

本日はもう1本

「コッホ先生と僕らの革命」 です。

規律と服従、それらを徹底的に叩き込まれたドイツの少年たちは、た
だ大人たちの命令を聞くだけの魂の抜け殻。少なくとも新任教師に目
にはそう映っている。物語は、彼が英国から持ち帰ったサッカーを通
じて、身分を超えたチームワークと時に先頭に立って戦う勇気、何よ
り自分で決断する大切さを教えていく姿を描く。それは生徒たちが初
めて知った自由の喜び、彼らは斬新な授業の中で義務と責任もまた学
んでいく。結末が読める展開ながら、階級間格差や教育的思想など当
時の社会情勢がディテール豊かに描写されているので決して飽きさせ
ず、特にビスマルク時代のドイツ国歌が英国歌と同じメロディだった
のは新鮮な驚きだった。

統一間もないドイツ帝国の名門校に英語教師・コッホ先生が赴任して
くる。反英感情から生徒たちはコッホに反発するが、ボールを蹴らせ
ると生徒たちはたちまちサッカーに夢中になる。

どんな社会でもいじめはあり、この学校では労働者階級の生徒が貴族
の息子にターゲットにされる。だが、小柄でひ弱なこの生徒がサッカ
ーで頭角を現すとクラスメートに一目置かれるようになったりと、才
能と努力次第で人生は切り開けるとコッホは気付かせていく。また、
体操具メーカーの息子の商才は新たな時流も予感させる。

コッホは説教臭くならず生徒たち自身に考えさせ行動を促す。唯一、
傷痍軍人への非礼に激怒するが体罰は与えない。その誇り高きフェア
プレー精神こそがコッホが一番伝えたかったことなのだ。

お勧め度=★★★*(★★★★★が最高)

「コッホ先生と僕らの革命」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120809

を参考にしてください。

本日はもう1本

「ウェイバック -脱出6500km-」 です。

雪深い森林地帯、灼熱の太陽が容赦なく照りつける砂漠、峻嶮な山岳
地帯。身を守る武器や狩りの道具、距離や方角の測定具はなく、水も
食料も僅かしか持たない男たちは、ただひたすら南に向かって歩く。
自由を求めて。映画はシベリアの収容所を抜け出した囚人が大自然の
脅威に直面しながら、インドまでの気の遠くなるような道のりを徒歩
で踏破する姿を追う。登場人物がおかれた過酷な状況を再現するため
に様々な気候の土地で敢行されたロケーションの厳しさと美しさに、
作り手の熱意と映像の力を強烈に印象付けられた。

1940年、スパイ容疑でソ連軍に逮捕されたポーランド人・ヤヌシュは
バイカル湖北方の収容所に送られる。そこは四方を森と氷雪で囲まれ
た極寒の地、しかしヤヌシュは吹雪の夜に6人の囚人と共に脱走する。

収容所にいたころはお互いの身の上をほとんど話さなかったのに、バ
イカル湖で合流した少女・イリーナが話しかけると、寡黙な男たちは
饒舌になり彼女にだけは自分の物語を聞かせる。死の不安に苛まれて
いた彼らが、彼女の前で初めて心に安らぎを覚えていくのだ。やがて
家族に伝えたい言葉、叶えたい夢など、具体的なイメージで語られた
それらの思いが彼らを支え、疲れ果てた足を前に進めさせる。

なにより自ら命の危険にさらされても、決して仲間を見捨てないヤヌ
シュの誠実さが、この苦難に満ちた旅の中で唯一の希望となっていた。

お勧め度=★★★*(★★★★★が最高)

「ウェイバック -脱出6500km-」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120809

を参考にしてください。