2012年10月27日土曜日

こんな映画は見ちゃいけない!(10/27)

本日、とりあげる作品は

「ザ・レイド」 です。

撃つ、絞める、斬る、殴る、刺す、打つ、蹴る、投げる、へし折るetc.
チンピラと警官がマシンガンをぶっ放し、スナイパーが狙撃し、拳
銃を乱射する激しい銃撃戦。ナタを振りおろし、ナイフで切りつけ、
トンファを突きあげる大乱闘。その上達人同士の果たし合いまで100分
間のノンストップ・バトルアクションは瞬きを忘れてしまうほどの速
さと力強さを備えている。防御と攻撃が表裏一体となった流麗かつ実
践的なインドネシアの必殺拳・シラットを基本にした格闘シーンは目
を見張るアイデアにあふれていた。

ギャングのボスが管理する高層アパートに20名の武装警官隊が突入す
る。しかし退路を絶たれた警官隊は1人ずつ落命していく。そんな中、
若き隊員・ラマは得意の武術でチンピラどもを倒していく。

狭い廊下で刃物を振りかざす10人以上のチンピラに単身突撃するラマ。
体のあらゆる部分を使って打撃を加え、関節をひねり、急所を抉って
いく。同時に負傷した仲間をかばいながら、床にもぐり、窓から飛び、
壁に隠れ、数的に勝るギャングたちを次々に仕留めていく。火器に頼
らず、かといって相手の虚を突くでもなく、イーブンな条件で闘いを
挑むあたり、男の美学すら感じさせてくれる。

ラマを演じるイコ・ウワイスをはじめ、主要登場人物が驚異的な身体
能力で危険なスタントをみせるサービス精神と、ひたすら活劇に徹し
た演出の潔さに、最後までスクリーンにくぎ付けになってしまった。

お勧め度=★★★★(★★★★★が最高)

「ザ・レイド」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120915

を参考にしてください。

本日はもう1本

「危険なメソッド」 です。

目玉をむき出しにし、下あごを突出し、眉間にしわを寄せ、頬を引き
つらせる。顔中の筋肉を総動員して、次々と湧き上がる恐怖と怒り、
不安と疑念、苛立ちと憎しみといった感情を表現する。激しいヒステ
リー症状で精神病院に収容されたヒロインを演じるキーラ・ナイトレ
イの恐ろしいまでに気迫のこもった表情の変化は、リアリティを超え
た圧倒的な迫力。人間の胸の奥に巣食う闇の部分の硬さと脆さと攻撃
性を見事に再現していた。

スイスの精神科医のユングは美しい患者・ザビーナにフロイトの対話
療法を試み、改善に成功する。数年後ウィーンのフロイトを訪ね初対
面で意気投合、フロイトはユングを精神分析学の後継者に指名する。

フロイトは薬物依存症の精神分析医・グロスの身柄をユングに託すが、
グロスの"快楽に身をゆだねろ"という言葉がユングのザビーナに対
する思いに火をつける。ユングはザビーナへの欲望を満たし、ザビー
ナもまた己のリビドーに従いつつ精神医学への道を邁進する。「精神
科医が精神を病む」「精神を病んだ者が精神科医を目指す」。他人の
心を治療する立場である医師の心も壊れる一見矛盾した構図が、精神
医学の危うさとそれにもまして精神の複雑さを象徴する。

その後も、ユングはザビーナとも離縁復縁を繰り返したり新たな愛人
を作ったりと、"抑圧"を解放するのに忙しい。ユング本人は、そん
な自身の気持ちをどのように解釈していたのだろうか。。。

お勧め度=★★★*(★★★★★が最高)

「危険なメソッド」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120901

を参考にしてください。

本日はもう1本

「声をかくす人」 です。

女はすでに死を覚悟しているのだろう、自分の命と引き換えにしてで
も守るべきもののために。有罪を決定づける証拠は薄いが、心を閉ざ
したままの彼女の意志は固い。映画は大統領暗殺幇助の容疑で起訴さ
れた未亡人の人権を守り、法に則って裁きを受けさせようとした若き
弁護士の孤独な戦いを描く。検事も陪審も裁判官も傍聴席もみな大統
領支持者の四面楚歌状態で、被告を有罪にすれば弁護能力を問われ、
無罪を勝ち取れば世間を敵に回すという苦境に立たされた主人公は、
あくまで真実を探ることで、感情に流されない法の適用を訴えていく。

リンカーン大統領が南部の残党に射殺され、犯人数名が逮捕される。
その中に、彼らの密会に場を提供した寡婦・メアリーもいた。元北軍
将校のエイキンは無実を主張するメアリーの弁護を依頼される。

当然エイキンも暗殺犯を死刑にしたいと考えていたが、被告がだれで
あっても等しく弁護される権利を持つ合衆国憲法の精神を順守する決
意を固める。ところが、検察側証人の証言は矛盾だらけ、しかも民間
人なのに軍法会議にかけられる形のみの裁判に違和感を覚え、弁護士
としての責務に目覚めていく。

確証がないのに最初から死刑ありきの茶番劇のさらしものにされたメ
アリー。「戦時に法は沈黙する」、その言葉は"テロ国家"に侵攻し
独裁者を絞首台に送った現代の米国人に胸にも突き刺さるはず。あの
戦争と裁判は果たして正当な手続きを踏んでいたのかと。。。

お勧め度=★★★*(★★★★★が最高)

「声をかくす人」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120907

を参考にしてください。

本日はもう1本

「終の信託」 です。

人を死なせる権限が果たして医者にあるのか。病気やけがに苦しむ人
を助けるのが使命ならば、患者が抱える耐えがたい肉体的精神的苦痛
から解放してやるのもまた仕事と信じる女性医師。一方、彼女の行為
を"殺人"と断罪しようとする検事。映画は、患者と医師の間に流れ
る穏やかな時間と、検事と医師の間に張りつめた刺々しいテンション
を対比させ、医師は患者の尊厳をどう守るべきかを問う。もちろん正
解はなく結末も釈然としない。それでも、確実に待ちうける"死"の
宿命に対しどんな心構えをしなければならないか考えさせられる。

呼吸器科の医師・綾乃は重症の喘息患者・江木から延命治療しないよ
う歎願される。ある日、江木が救急搬送され、すでに脳機能は低下し
回復の見込みはない彼の人工呼吸装置を綾乃ははずす。

不倫と自殺未遂で悩んでいた綾乃を江木は優しく勇気づけ、医師と患
者の関係以上の思いがふたりの間には芽生えている。だからこそ江木
は延命拒否を綾乃に頼んだのだが、あくまでふたりだけが知ること。
それを検察に呼び出された綾乃が待合室で回顧する構成は、もしかし
たら江木とのエピソードは綾乃の作り話かもと思わせる効果があり、
心理的に不安定な綾乃の危うさが垣間見えてくる。

そして検事は彼女に質問し事の本質をついていく。検事の言葉の刃を
綾乃がいかにかわすか、スリリングな密室の会話劇は、一瞬たりとも
気が抜けない濃密な映像となり見る者をスクリーンにくぎ付けにする。

お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

「終の信託」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20121019

を参考にしてください。

本日はもう1本

「009 RE:CYBORG」 です。

「正義」とは、今やその単語を口にする者にとっての真実でしかなく、
対立する他者の「正義」は排除すべき邪念。価値観が混沌とした現代、
世界中で起きるテロの連鎖は未曽有の様相を呈し、もはや人の叡智で
は解決できない。そこは神の領域なのか。いや、神ですら人間の脳が
作った幻覚、ではいったい何がテロリストたちの意識を支配し行動に
至らしめたのか。映画は、何故自分は存在するのか、生きているのか、
自らのアイデンティティを繰り返し問う主人公を通じて、人生の意味
と自己犠牲の美しさを謳う。

世界各地の大都市で高層ビルが相次いで爆破テロの標的にされる。や
がて六本木ヒルズも攻撃を受けるが、現場にいたジョーは003と005に
よって009の能力を覚醒され、ギルモア博士の元に召集される。

ギルモア博士と袂を分かった002は米国政府のスパイになり、同じく英
国諜報員となった008からテロの実行犯はみな「彼の声」を聞いたとい
う情報を得る。一方で、国際社会に緊張状態をもたらして影響力を高
めようとするイスラエルと米国の陰謀説も飛び交う。事件のカギを握
る金髪の少女と天使の化石、更なる混迷と混沌の中で、新たな破壊を
止めるべく009たちが奮闘する。

ビルの倒壊、高速飛行のステルス機上での格闘などのアクションシー
ンは、3Dで再現された細密で圧倒的な情報量の映像で視界を覆い、研
ぎ澄まされたサウンドが臨場感をもたらす。

お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

「009 RE:CYBORG」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20121018

を参考にしてください。