2012年9月8日土曜日

こんな映画は見ちゃいけない!(9/8)

本日、とりあげる作品は

「夢売るふたり」 です。

浮気して朝帰りした夫を熱い風呂に入れて問い詰める妻。心の奥底に
眠っていた悪意に彼女が目覚めた瞬間の描写は、背筋が凍るとともに
微妙にずれた空気がおかしさを誘い、この作品のテーマである人間の
多面性を象徴するシーンになっている。仲が良かった夫婦が結婚詐欺
を繰り返すうちに、本人ですら自覚していなかった己の深層心理と、
お互いが知らなかった相手の本性に気づいていく。ふたりの関係が共
犯者に変わっていく過程で見せる、男と女の駆け引きがスリルとアイ
ロニーに溢れていた。

小料理店を営む貫也と里子は火事で全財産と夢を失う。ある日、貫也
が常連客だった女と寝て大金をもらったことから結婚詐欺を思いつき、
新たに夫婦で勤め始めた料亭でカモを物色する。

寂しい女を見抜く能力に長けた里子は貫也をコントロールして、貫也
は言葉巧みに女たちからカネを引き出していく。里子を演じた松たか
子は、人を欺く行為に開放感と後ろめたさを感じている彼女の感情を、
獲物を物色する獰猛さといつか悪事がばれるのではという恐れの入り
混じった複雑な光が同居した目で表現する。

まじめに働いていた里子が落ちる"越えてはならない一線"と一度踏
み外してしまった後の彼女の腹のくくり方、そして貫也に騙されてい
ると感づきつつも彼を疑うのは自身の愛の否定と思いこむ女たち。女
たちの生理と思考が生々しいまでのリアル感で再現されていた。

お勧め度=★★★*(★★★★★が最高)

「夢売るふたり」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120804

を参考にしてください。

本日はもう1本

「凍える牙」 です。

有能さゆえに男社会からつまはじきにされる女と、チームプレーにな
じまない男。2人は反発しながらも徐々に能力を認めあい、お互いを思
いやる気持ちを育くんでいく。その過程で、警察組織における人間関
係の難しさと、女性の地位の不当な低さといった問題点があぶり出さ
れる。物語は奇妙な連続殺人を追ううだつの上がらない中年刑事とバ
ツイチ美人刑事のコンビが、恐るべき真実に辿り着くまでを描く。

焼身自殺を偽装した死体から犬の噛み痕が見つかり、その後売春組織
のチンピラが犬に襲われ死ぬ。担当となったサンギルは新人女刑事・
ウニョンを押し付けられ憤慨しつつも、犬の訓練センターを調査する。

出世で後れを取り家庭も崩壊状態のサンギルと、せっかく憧れの刑事
になったのに忙しさゆえ夫に逃げられたウニョン。手柄を立てようと
暴走するサンギルに付き合わされるウニョン。はみ出し者の2人は相手
の事情を理解するにつれ孤立していた心を和ませていく。さらに捜査
を進めると、狼との雑種犬が浮かび上がってくる。娘を凌辱された男
の復讐の道具として殺人マシーンに育てられたその狼犬は、ウニョン
にどこかで通じるものを感じたのだろう、ウニョンが乗るバイクを闇
でうごめく悪党たちのアジトに導いていく。

ターゲットの臭いを数キロ先から嗅ぎ分けて気配もなく忍びより、一
瞬のすきを突いて喉元にかみつく、高度に訓練された狼犬の知性あふ
れる鋭い眼差しが印象的だった。

お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

「凍える牙」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120629

を参考にしてください。

本日はもう1本

「ハーバー・クライシス 湾岸危機」 です。

閃光とともにきのこ雲が湧きあがり数秒後に強烈なエネルギーがすべ
てを焼き尽くす。反物質を応用した新型大量破壊兵器実験シーンの爆
発から衝撃波到達までの「間」が絶妙で、思わず映像の迫力に息をの
む。そして、カーチェイスに始まり派手な銃撃戦と格闘、加えて航空
機上での死闘までスリリングなアクションの連続は、瞬きするのもは
ばかれるほどのスピードとテンション。映画は殺人事件を捜査する刑
事と奪われたダイヤを取り戻そうとするヤクザが同じターゲットを追
ううちに、巨大な陰謀に巻き込まれていく姿を描く。

停職中の刑事・ウーは密売現場に踏み込むが謎の軍人集団が武力で取
引を制圧、ダイヤ入りケースを強奪していく。生き残ったヤクザ・シ
ューとウーは利害が一致し、とりあえず行動を共にする。

助けてくれたヤツは信用できるのか、襲撃者の黒幕は何者なのか、迫
りくる大量破壊兵器の起爆を止められるのかといった様々な障害が2人
に突き付けられ、結局お互いしか信頼できないと悟ったウーとシュー
の間に友情が芽生えていく。そのあたり、ハードな活劇とは対照的に
、実は小心者のシューがコミカルなアクセントとなって緊張をほぐし
てくれる。

次から次に襲いかかる敵、誰に加勢すべきかわからないまま応戦し、
時に逃げつつも真相に近づこうとする過程は多少の混乱はあるものの、
スピーディな展開は考える暇を与えない。

お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

「ハーバー・クライシス 湾岸危機」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120830

を参考にしてください。

本日はもう1本

「ディクテーター 身元不明でニューヨーク」 です。

もし独裁者が大都会で迷子になったら・・・。身分を証明できず警備担当
者に追い返され、同胞の元に身を寄せても周囲は敵意だらけで真実は
明かせない。幸い素性はばれず、彼は政権に復帰するために市民に紛
れ込み、復活の機会をうかがう。物語はそんな男が、国民が意見を口
にする権利が保障され思いのまま生きることが許されている民主主義
に触れ、愛を知って変わっていく姿を描く。映画は、21世紀になって
も国内を情報統制して、いまだ独裁を続けるテロ国家の指導者のバカ
バカしさを笑い飛ばす。

北アフリカの独裁者・アラジーン将軍は核疑惑の釈明のために国連本
部に赴くが、何者かに拉致される。なんとか脱出するが、トレードマ
ークのヒゲを剃られてしまう。国連では影武者が民主化を宣言する。

処刑が横行し、自己宣伝に長け、言葉の意味も変え、美女を侍らせ、
核兵器を開発する。まさに絵に描いた独裁者生活を楽しむアラジーン。
世界中の批判をむしろ称賛ととらえている。その彼のカン違いぶりを
下品にコケにし、さらに辛辣な差別が盛り込まれ、その映像に仕込ま
れたわずかな毒が、見る者に、腹を抱える自分を別の自分が覚めた目
で見つめているような錯覚をもたらすあたり、強烈な社会風刺になっ
ている。

やがて地元のエコ活動家・ゾーイと時間を共にするうちに恋という感
情を知ったアラジーンは、彼女の思想を理解し始めるのだが。。。

お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

「ディクテーター 身元不明でニューヨーク」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120731

を参考にしてください。