2013年10月17日木曜日

こんな映画は見ちゃいけない!(10/17)

本日、とりあげる作品は
「ダイアナ」です。

警備員や執事といった人々に四六時中守られ、身の回りの世話を任せているけれど、胸の内を打ち明けられるのはエステティシャンだけ。かつて世界中の注目と祝福を浴びた元皇太子妃の眼前にあるのは、抱えきれないほどの孤独。そんな彼女が、初めて自分を特別な目で見ない男と出会い、恋に落ちる。物語は若くして交通事故死したダイアナ元妃の最期の2年間を描く。慈愛あふれるプリンセスの顔で海外を飛び回りつつも、女としての幸せを追いかけて己に正直に生きようとする。一見愚かにも見える、葛藤する姿が人間的で親近感を覚える。
離婚したダイアナは人生に倦んだ日々を送っていた。ある日、父危篤の知らせが入り病院に駆け、主治医・ハスナットの飾らない人柄にときめきを感じたダイアナは、彼を宮殿に招待し親交を深めていく。
離婚後もそれなりの身分は保障されているが、世間からみるとゴシップの対象。だがハスナットと一緒にいたい気持ちを抑えきれない。クルマのトランクに身をひそめたり、駐車場でクルマを乗り換えたり、黒髪のウィッグで変装したりと、涙ぐましい努力をして束の間の逢瀬を楽しむふたり。
ハスナットとの甘いひとときに身も心も溺れていくダイアナは普通の恋する女と変わらない。一方で地雷除去活動では並々ならぬ決意を全世界に示す。その私生活と公務のギャップが、彼女が人々に愛された理由だろう。
お勧め度=★★(★★★★★が最高)「ダイアナ」についての詳細は、http://d.hatena.ne.jp/otello/20130918を参考にしてください。
本日はもう1本
「ゴースト・エージェント R.I.P.D.」です。

ショットガンを浴びて落下、床にたたきつけられた男が目を開けると、人は鼓動を止め、飛び交う破片や銃弾、パトカーまでが空中で静止している。固まってしまった世界で覚醒し足を動かしているのは自分だけ。3Dで再現された奇妙な感覚、奥行ある映像が「死」をリアルに実感させる。物語は殉職した刑事が、成仏せずに悪事を企む悪霊たちを取り締まる捜査官になって大活躍する姿を描く。未練を残した妻に思いを伝えたいが、全くの別人の外見で復活しているため取り合ってもらえない。そのギャップが、派手なアクションの中にもユーモアと切なさをもたらし、主人公の愛の深さを代弁していた。
刑事のニックは横領した金塊を返納しようとして相棒のボビーに殺される。あの世の入り口で悪霊捜査官・R.I.P.D.に志願したニックは、ベテラン捜査官・ロイとコンビを組んで地上に戻ってくる。
R.I.P.D.隊員同士には生前の風貌のまま認識されるが、生きている人間にはニックは中国人の老人、ロイはブロンド美女に見えている。ボビーがニックの妻・ジュリアに近づき金塊の隠し場所を聞き出そうしても、ニックに阻むすべはない。
映画は謎解きの面白さよりも視覚効果に軸足を置き、悪霊ハンター対悪霊たちのバトルで楽しませようとする。あらゆる方向から降り注ぐ多大な情報量のCGと音響の圧倒的な臨場感に、体験型アトラクションに参加している気分を味わった。
お勧め度=★★(★★★★★が最高)「ゴースト・エージェント R.I.P.D.」についての詳細は、http://d.hatena.ne.jp/otello/20130906を参考にしてください。
本日はもう1本
「陽だまりの彼女」です。

風に揺れるモービルをせわしなく目で追う、興味がないと素知らぬふり、関心を持ったことには目を丸くして好奇心をむき出しにする。かまってほしいときには体を摺り寄せるけれど、相手の話はほとんど聞いていない。熱いコーヒーを飲めない・・・。気まぐれだけど一途なロインを上野樹里がしなやかに演じる。物語は10年ぶりに中学時代の同級生に再会した主人公が、彼女の魅力を再発見していく過程を描く。ふたりにとってはつらい過去も、共に過ごすうちに美しく懐かしい思い出に変わっていく。そんな恋の魔法の数々が、きらめくような映像に再現されていた。
広告会社に勤務する浩介は、取引先で打ち合わせに現れた真緒に驚くが、思い切って誘いのメールを出す。真緒は快く返事、ふたりはデートを重ねる仲になるが、浩介は真緒の父から衝撃の事実を知らされる。
中学時代いじめられていた真緒を助けた浩介はクラスから孤立し、ふたりは仲良くなる。男女で一緒にいるのが恥ずかしくて仕方のない年頃なのに、真緒は浩介から離れない。浩介の何気ない優しさとただ浩介といるだけでほおが緩む真緒、すっかり忘却の彼方に置き去りにされていた出来事が浩介の脳裏によみがえる。
ところが浩介の胸に真緒との記憶が蓄積されるに従って真緒がやつれていく。満ち足りた毎日に暗い影がよぎり、真緒が命を削って秘密を守る姿が哀しく、事情が呑み込めず葛藤する浩介の苦悩が切ない。
お勧め度=★★★(★★★★★が最高)「陽だまりの彼女」についての詳細は、http://d.hatena.ne.jp/otello/20131014を参考にしてください。
本日はもう1本
「レッド・ドーン」です。

轟音と共に目覚めると空挺部隊がパラシュートで降下してくる。平和な町はあっけなく制圧され市民は自由を奪われる。経済危機とサイバーテロで弱体化した防衛ラインはいとも簡単に破られ、敵の侵入を許してしまった米国。映画は、海外に派兵はしても、核ミサイル以外に本土が攻撃されるのを想定していない弱点を衝く。だが祖国を守ろうとする勇者は必ず現れる。物語は、一度は山中に逃げた若者たちが解放軍を組織して、占領軍相手に戦う姿を描く。無理のある設定ながら、愛国心を鼓舞する効果は絶大だ。
田舎町の高校生・マットの元に海兵隊員の兄・ジェドが帰郷してくる。翌朝、北朝鮮軍が米国に侵攻、支配下に置くが、ジェドとマットは数人の友人と共に山小屋に隠れ、武器弾薬食料を集めて徹底抗戦を誓う。
彼らの中で銃の扱いに習熟し戦闘経験があるのはジェドひとり。ジェドは占領軍から強奪した小銃・爆弾でマットたち高校生を鍛え上げ、ゲリラ戦術を叩き込む。ウルヴァリンズと名乗る彼らは、町のあらゆる場所で爆弾を仕掛け、奇襲をかけて見事に北朝鮮正規軍を出し抜く。
要するにこの作品は、かつてのベトナムや21世紀のイラク・アフガンでの米国の占領政策の裏返し。故郷を土足で踏みにじった外国人に間違いを思い知らせてやる、そんな不屈の魂を持った人間がいる限り、力による統治は早晩破たんすることを米国のタカ派指導者たちに逆説的に訴えているのだ。そのメッセージは皮肉に満ちているだけに強烈だった。
お勧め度=★★(★★★★★が最高)「レッド・ドーン」についての詳細は、http://d.hatena.ne.jp/otello/20131015を参考にしてください。
本日はもう1本
「ムード・インディゴ うたかたの日々」です。

腕利きのコックが作る自己主張する料理、蛇口から出てくるうなぎ、演奏に合わせてカクテルを作るピアノ、長く伸びた足をくねらせるダンス…。独創的な小道具とパリの古い町並みはレトロフューチャーなイメージに命を与え、主人公が体験する、夢で見たような風景と愛の苦悩を再現する。ところが、あまりにも奇抜なアイデアの数々は驚きやあこがれを遠く超えてしまい、そこから放たれるファンタスティックな毒は何のメタファーなのかまったく見当がつかない。結果的にこの作品の世界観から完全にはじき出されてしまった。
コランはパーティでクロエを紹介され、たちまち恋に落ちる。ふたりは結婚するが、クロエは肺に睡蓮の花が咲く病気に侵され、高額な治療費のせいで資産が底をついたコランは仕方なく働きに出る。
小説の描写を可能な限り豊かな想像力で視覚化しているのだろう。カラフルな前半は、それゆえ遊び心に富み、不思議の国に迷い込んだ感覚にとらわれる。だが、それらが物語の展開にどんな影響を及ぼしているのかは不明で、ただ妄想に似た思いつきを具象化するばかり。コランとクロエの思考や行動にどうかかわるのかも理解できなかった。
不条理劇とはちがう、奔放なイマジネーションで満たされたコランとクロエの甘く切ないメロドラマととらえるべきなのだろう。恋をしている間は目に入るすべてがが極彩色の楽しさに彩られる、そんな幸せに浸っていられる者のみがこの映画を堪能する資格を持つのだ。
お勧め度=★★(★★★★★が最高)「ムード・インディゴ うたかたの日々」についての詳細は、http://d.hatena.ne.jp/otello/20131013を参考にしてください。