2012年10月6日土曜日

こんな映画は見ちゃいけない!(10/6)

本日、とりあげる作品は

「アウトレイジ ビヨンド」 です。

陰謀、裏切り、粛清……。誰もが腹に一物を抱え、わずかな油断で足
元をすくわれる。利害が一致しているうちは"兄弟"でも、立場が危
うくなるとすぐに切り捨てられるヤクザの世界。まさに寝首を掻くか
掻かれるかの緊張感の中で男たちは日々命がけで鎬を削っている。そ
してヤクザ同士の合従連衡を陰で操り勢力を殺ごうとする刑事。映画
は「義理と人情」といった任侠道とは対極にある現代ヤクザのドロド
ロとした人間関係を無数の銃弾と血で再現する。逃げ場を失った男た
ちが虚勢の皮をはがされたときの見苦しさが、本当は肝っ玉の小さい
彼らの本性をさらけ出していた。

関東最大の組織・山王会の会長に収まった加藤は知性派の石原を若頭
に抜擢、組の古参幹部は不満を募らせていた。ある日、幹部の一人が
現状を打破すべく刑事の片岡の手引きで大阪の花菱会に助力を求める。

それぞれの思惑が交錯し、もはや先に殺さなければ自分がやられる状
況の中、男たちは抜き差しならない立場に追い込まれていく。その中
で、前作ではショボいヤクザに過ぎなかった木村が驚異的な胆力を身
に付け親分連中を相手に渡り合うが、彼を演じた中野英雄の鬼気迫る
表情が印象的だった。

結局、組織に頼らなければ生き残れない、組織に頼り過ぎても使い捨
てにされる。確固たるバックグラウンドを持つ者でさえ命の保証はな
い。その救いのなさがヤクザ社会の男たちの運命を象徴していた。

お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

「アウトレイジ ビヨンド」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20121001

を参考にしてください。

本日はもう1本

「最終目的地」 です。

いつまでも講師ままでいられないのは分かっている、行動する勇気が
なかっただけ。いつまでも哀しみに浸っていてはいけないのは分かっ
ている、抜け出すきっかけがなかっただけ。そんな停滞した日々を送
っていた人々が出会ったっ時、彼らの時間が動き始める。物語は米国
の大学院生が、ウルグアイのある家族を訪ねたことから起きる、心の
変化を描く。ケータイもパソコンもない環境で、主人公が濃密な人間
関係を結んでいく過程は一種のカルチャーショックを覚える。

文学助教のオマールは、自殺した作家・ユルスの伝記執筆の公認を遺
族に断られるが、恋人のディアドラの勧めで直接依頼に行く。ユルス
の愛人・アーデンに歓迎されるが妻のキャロラインは公認に反対する。

ユルスの妻と愛人、その娘、兄とゲイ恋人の5人が暮らす奇妙な家族に
は、いまだにユルスが中心にいるよう。オマールは彼らのとって久し
ぶりの闖入者、家族はユルスの断片的な情報しかオマールに話さない
が、それでも徐々に公認しようという気になっていく。彼らはユルス
への思いをオマールに託して、ユルスの呪縛から解放されようとして
いるのかもしれない。

ゆっくりと流れる日常、何度も反芻しなければ真意を見抜けない複雑
な言葉と態度、望まぬ者との同居、忘れ得ぬ記憶、宗教上のタブー。
それらが混然としながらも同時に存在し、愛と憎しみと後悔と希望と
いった感情が交差する世界が端正な映像にまとめ上げられていた。

お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

「最終目的地」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20121002

を参考にしてください。

本日はもう1本

「ロラックスおじさんの秘密の種」 です。

道路や建物だけでなく木や花まで人工物でできた町、住人はそれが清
潔で快適な暮らしと信じていて、悪辣な企業家から新鮮な空気を買わ
なければならないことに疑問すら抱いていない。強権国家を連想させ
るような、情報を操作され現状に満足させられ人々と、富と権力を独
占する独裁者。映画はそんな町に木の種に象徴される希望を持ち帰ろ
うとする少年の姿を通じ、行動を起こさなければ何事も始まらないと
訴える。彼が操る一輪バイクの走りがダイナミックかつスリリングで
めまぐるしいアクションと時にミュージカル仕立ての構成が、自然環
境を保護するのは結局人間の生活を守ることだというもう一つのテー
マから説教臭さを消している。

植物がない町に住むテッドは本物の木が欲しいと言う女の子のために、
町はずれで隠棲するワンスリーを訪ねる。テッドはワンスリーに昔話
を聞かされるうちに、木を植え育てる使命に目覚めていく。

ワンスリーはかつて成功を夢見る企業家だったが、森の木の葉から作
った織物が大ヒット商品となり、工場を増設し大金持ちになっていく。
その過程で森の木の精・ロラックスと「木を伐らない」と約束してい
たが、強欲に負けてしまう。

切り株だらけの森、枯れ果てた草花、肩を落として去っていく動物た
ち。それは現在進行形で地球上のどこかで起きている悲劇、命を奪わ
れた草木と住処を追われた動物たちの悲哀が再現されていた。

お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

「ロラックスおじさんの秘密の種」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20121003

を参考にしてください。