2013年9月21日土曜日

こんな映画は見ちゃいけない!(9/21)

本日、とりあげる作品は
「甘い鞭」です。

四つん這いにされ、緊縛され、脚を広げたあられもない格好を強制された上で鞭打たれる女。肉体を痛めつけられることで、彼女はもう一度あの甘美な陶酔を味わいたいと願う。レイプされる恐怖でもない、服従を強いられた自我の放棄でもない、苦痛を超越した忘我でもない、そんな忌まわしいはずの過去が彼女の胸のなかでいつしか生きる目的になっている。物語は、高校時代に凄惨な事件の被害者になった経験のある女医が、凌辱の果てにたどり着いた禁断の境地を模索する姿を描く。聖女と娼婦を使い分ける壇蜜の熟した果実のような肢体がなまめかしく悶絶する映像は、世紀末的な退廃すら感じさせる。
産科医の奈緒子は、夜はM嬢としてSMクラブで男に体を提供している。彼女は17歳の時、変質者に1カ月間拉致監禁されたときに覚えた"甘い味"を忘れられず、以来それがなんだったのか探し求めていた。
17歳の奈緒子は男に縛られベルトで打たれる。32歳の奈緒子はプレー用の鞭に尻をさらす。逃げ場がなく命の危機と紙一重で絶望と闘っていた17歳の体験はSMクラブで再現きるものではなく、今の奈緒子は不満が募るばかり。彼女の体と心に刻まれているのは、あの一瞬の愉悦。それは事件の記憶以上に彼女の人生に影響を与え続けている。
映画は、奈緒子の肉体と精神を極限にまで追い詰めた時に現れる至高の感覚をひたすら追い続け、その過程で露わになる人間の本質を赤裸々に抉り出していく。
お勧め度=★★★(★★★★★が最高)「甘い鞭」についての詳細は、http://d.hatena.ne.jp/otello/20130705を参考にしてください。
本日はもう1本
「ウォーム・ボディーズ」です。

薄れゆく記憶の中に少しだけ存在する意識は、死んだはずなのに生き続ける青年にとって苦悩の源。まだ人間の部分は残っている、でも空腹に耐えきれず人間に噛みついてしまう、かといってまったく理性を失ったガイコツにはなりたくない。そんなアイデンティティクライシスに陥ったゾンビ像が新鮮だ。物語は食料調達に出たゾンビが人間の少女に一目ぼれしたのをきっかけに起きる冒険を描く。決して恋に落ちてはいけない相手、しかしその思いは抑えきれない。映画は、他者への愛がハートに血を通わせ、生きる動機になり喜びを生むと訴える。
ゾンビとして無為に時間を過ごすRは、医薬品調達に来た人間の一団を襲ったときに、そこにいたジュリーに心を奪われる。ジュリーを匿いつつ彼女の歓心を買おうとするうちに、Rの体に変化が現れる。
人間はもちろんゾンビを警戒している。それ以上にゾンビたちも人間に"殺されない"ように集団行動を取る。ここではゾンビも"死"を恐れているという矛盾が、ユーモアを感じさせつつも、ゾンビでいる辛さを象徴する。Rにとってジュリーは無間地獄から救ってくれる希望に見えたのだろう、ジュリーの恋人の脳を食べて彼らの思い出を吸収し、その願いを確信に変えていく。
一方のジュリーも、Rが彼女を食うつもりがないと知って敵意を解く。争っているばかりでは悲劇が繰り返されるばかり、お互い理解しあえば新たな関係が構築できると、ふたりは身をもって証明しようとする。
お勧め度=★★★(★★★★★が最高)「ウォーム・ボディーズ」についての詳細は、http://d.hatena.ne.jp/otello/20130809を参考にしてください。