2012年11月24日土曜日

こんな映画は見ちゃいけない!(11/24)

本日、とりあげる作品は

「裏切りの戦場 葬られた誓い」 です。

自分を信用してくれた敵との約束と、それを反故にせよという上層部
の命令。板挟みになった男は信義よりも国家への忠誠を選ばざるを得
ない。物語は反乱軍との人質解放交渉役を担った将校が、平和的に解
決しようと敵の懐に飛び込む一方で、味方の強硬派政治家・将軍らに
努力を踏みにじられていく姿を描く。反逆者といえども必ず言い分が
あり、彼らの信頼に足る人間でありたいと願うが、それでは規律を乱
してしまう。映画はそんなジレンマに陥った主人公の葛藤を、軍人ら
しく感情の抑制が効いた映像で再現する。

1988年4月、仏領ニューカレドニアで独立派武装ゲリラが憲兵隊宿舎を
急襲、人質を取ってジャングルに立てこもる。憲兵隊大尉のフィリッ
プは部下とともに派遣されるが、指揮権は陸軍が握っていた。

現地民を「ニグロ」と呼ぶ差別意識丸出しの陸軍との主導権争い、中
道左派と保守派が争う大統領選挙の行方を横目に様子をうかがうタカ
派大臣、それら"味方の中の敵"との意見の相違を調整しつつ、あく
まで人命を尊重するフィリップは反乱軍のリーダー・アルフォンソと
接触、彼らの要求を聞き出そうとする。

反乱軍の訴えの正当性を語らせ気持ちを通わせたはずのアルフォンソ
を、つまり原住民たちを裏切らなければならない苦悩。憔悴し、怒り
を抑え、そのうえで己のせいで命を落としたゲリラの死体が転がる前
線に戻るフィリップの心の痛みが胸をえぐる。

お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

「裏切りの戦場 葬られた誓い」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20121004

を参考にしてください。

本日はもう1本

「ロックアウト」 です。

どんなに危機的な状況でもジョークを絶やさず、勇気と機転と行動力
と抜群の身体能力でピンチを切り抜ける。女にも厳しいが責任感は強
く友情にも篤い、腕はたつが強烈な皮肉屋でもある。そんなハードボ
イルドな香りを濃厚に放つ男をガイ・ピアースが熱演。約70年後の米
国が舞台なのに、タバコをくわえジッポのライターを愛用する時代錯
誤的なヒーロー像が新鮮だ。物語は人工衛星軌道に作られた隔離施設
からVIPを救出する任務を負った主人公の奮闘を描く。命がけのスリル
を楽しむ姿がクールだ。

大統領の娘・エミリーは宇宙監獄・MS-1の視察に訪れるが、反乱を起
こした凶悪犯のハイデルとその兄・アレックスに人質になる。彼女の
保護を命じられたスノーは単身MS-1に潜入、次々と封鎖を破っていく。

ブリーフケースを奪ったスノーが重武装の警官隊から逃げ回るシーン
は、あえてリアルの逆をいく人工風CGの中をバイクで疾走させ、レト
ロな味わいを見せる。他方、スマホや拳銃、地下鉄といった小道具は
あまり現代から進歩しておらず、また米大統領執務室が地下にあるな
ど、それら現在と未来が混然とした独特の世界観は、もはや経済的成
長は望めず犯罪の増加に苦慮する米国社会を象徴しているようだ。

眠っていたとはいえ囚人の人数は圧倒的、統率がとれていない烏合の
衆ではあるが元凶暴犯ゆえ一つ間違えれば暴走しかねない予兆が緊張
感を醸し出す。

お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

「ロックアウト」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20121016

を参考にしてください。