2012年10月4日木曜日

こんな映画は見ちゃいけない!(10/4)

本日、とりあげる作品は

「エージェント・マロリー」 です。

屈強な男たちに殴られ蹴られ羽交い絞めにされ馬乗りになってまたボ
コボコに殴られても、決して怯まない。不利な体勢から手足を絡ませ
関節をきめ、ひじ打ちをかまして延髄切りで反撃する女。映画は、ア
ザだらけ傷だらけになりながらも、あくまで素手でのファイトを貫く
ヒロインの圧倒的なテクニックとタフネスを再現する。鍛え上げられ
た頑丈な肉体と洗練された技の数々はプロ格闘家がもつ本物の迫力、
しなやかで無駄のない体の使い方が鍛錬にかけた年月の長さを物語る。

元同僚のアーロンにいきなり襲われた民間のスパイ・マロリーは、逆
に彼を撃退し、居合わせた青年のクルマで逃走する。道中、マロリー
は青年に、バルセロナとダブリンでのミッションを話して聞かせる。

バルセロナでの指令を全うしたマロリーは、上司で元恋人のケネスに
すぐダブリンに行けと命じられる。そこでパートナー役の殺し屋に不
意を突かれる。仕組まれた罠、裏切りと欺瞞、誰を信用すべきで、何
を疑うべきか。マロリーは生存本能をフル稼働して、敵意に満ちた街
を駆け抜け屋根を伝い外壁を飛び降り追ってくる武装警官を一人ずつ
排除していく。銃器弾薬に頼らずカタをつけようとするマロリーのス
タイルは非常に小気味よい。

ただ、無名の新人女優が並み居るハリウッドスターをぶちのめしてい
くところが見どころなのは理解できるが、せめて使い捨てにされる殺
し屋の悲哀が描かれていればマロリーに共感できたのだが。

お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

「エージェント・マロリー」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20121001

を参考にしてください。

本日はもう1本

「ハンガーゲーム」 です。

守るべきは自分の命なのか人間としての尊厳なのかを自問し続ける。
物語は「バトル・ロワイヤル」をハリウッド流にスケールアップさせ、
運命に立ち向かう中で次第に自らの使命に目覚めていくヒロインの成
長を描く。未来都市の造形と都市の人々のファッションが目を見張る
一方、プレイヤーたちが使う戦略や戦術がアイデアにあふれ、経験値
が増すうちに強くなっていく姿がゲーム感覚で楽しめる。

年に一度開かれるハンガー・ゲーム参加者に選ばれた妹にかわって志
願したカットニスは、同地区のピーターともにトレーニング施設に送
られる。研修の後、24人のプレイヤーは深い森の闘技場に放たれる。

支配層が住む都市部と隷属地区の格差、さらに隷属地区の住民は支配
層のために命がけの娯楽を提供させられている。もはや支配される側
は希望も持てず、圧倒的な支配層の権力の前で抵抗する気力すらなく
ただ従属を強いられるのみ。映画はそうした背景の説明に半分以上の
上映時間を割き、その閉鎖的な身分社会は行き過ぎた資本主義のなれ
の果てなのか、現代社会の写し鏡のようだ。かなり歪んではいるが。

やがてハンガー・ゲームが開始、カットニスはサバイバルキットを手
にすると森に隠れ、殺し合いを傍観する。その後の展開は、カットニ
スが勝者になるのも含めてある程度予想はつくが、監視している組織
がやたらゲームに介入したり、スポンサーが差し入れしたりするのに
は鼻白む思いだった。

お勧め度=★★(★★★★★が最高)

「ハンガーゲーム」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20121002

を参考にしてください。

本日はもう1本

「ライク・サムワン・イン・ラブ」 です。

こちらの都合にはお構いなく、いきなり貴重な時間を奪っていく。火
急の用ではないと無視してもメッセージが残され、返答しなかったこ
とに小さな罪悪感を植え付ける。電話というツールの、かける方の傍
若無人さに振り回される受信者の迷惑が再現されるエピソードの数々
がリアルで楽しめた。忙しいのに用件を押し付ける、一度応答すると
なかなか切れない、そんな電話を受けてしまった人々のうろたえぶり
が滑稽だ。映画は女子大生エスコート嬢と客の老学者の夜と昼に密着
し、ままならぬ日常の1コマを切り取る。

デリバリー風俗嬢のアキコは恋人・ノリアキとのトラブルを抱えたま
ま引退した大学教授・ワタナベの部屋に派遣される。ワタナベはアキ
コに亡き妻の面影をみて丁寧にもてなすが、アキコは眠ってしまう。

翌朝、ワタナベはアキコを大学まで送るが、待ち伏せていたノリアキ
はワタナベをアキコの祖父と思い込んで話しかけてくる。粗暴な男だ
が、仕事や結婚に対してはしっかりとした考えを持つ筋の通った一面
に、ノリアキに対する先入観が覆されていくが、当然アキコとの本当
の関係は明かせないでいる。そして一度ついた嘘を破綻させないため
にさらに嘘を重ねていく。その危うさが奇妙な緊張感を生んでいた。

ところが、多用される長まわしのカットはひたすら冗漫な上、彼らの
会話には無駄な"間"が多い。このアンバランスに人生の不条理を感
じさせようとする監督の狙いは成功しているとは思えなかった。

お勧め度=★★(★★★★★が最高)

「ライク・サムワン・イン・ラブ」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20121003

を参考にしてください。