2013年10月5日土曜日

こんな映画は見ちゃいけない!(10/5)

本日、とりあげる作品は
「R100」です。

突然現れた女王様に回し蹴りを喰らい、握りずしを叩き潰され、噴水に沈められる男。苦痛の奥にある愉悦に思わず目を細めほおを緩める。病床の妻を心配しながら一人息子とつつましく暮らす彼にとって、唯一心が休まる瞬間だ。物語はSMクラブと特別な契約を結んだ主人公が徐々に蝕まれていく姿を描く。肉体的だけではない、精神的にも追い詰められる彼の、もう逃げ出したい、でも忘れられない、一度足を踏み入れると絶対に抜け出せない禁断の忘我をシュールな映像で再現する。既成の価値観で理解しようとしてはいけない、ただ受け入れるのみ。松本人志も"考えるな、感じるんだ"の境地に達したようだ。
サラリーマンの片山はSMクラブ"ボンデージ"に入会、その日から日常生活に女王様が闖入し彼を責める。当初片山はサプライズに満足していたが、次第にエスカレートするプレイに悩まされ始める。
女王様が片山の職場を訪れ彼を鞭打ち罵倒する場面には不安を、妻が入院する病室で片山を縛りろうそくを垂らすシーンには危うさを覚え、身の危険を感じた片山が警察に相談する気まずさと困惑には脇腹をくすぐられる。さらに謎の男が警告を発したりするなど、一応ストーリーはあるが、もはや限りなく妄想に近いまったく先の読めない不条理な展開。
だがそこから発散される豊穣なイマジネーションは強烈な引力を放ち、笑いと共感と未体験の興奮を味あわせてくれる。
お勧め度=★★★★(★★★★★が最高)「R100」についての詳細は、http://d.hatena.ne.jp/otello/20130815を参考にしてください。
本日はもう1本
「フローズン・グラウンド 」です。

昼なお薄暗い極北の地、弱々しい太陽の光は町の片隅でひっそりと生きる人々には届かない。それでも石油目当てに様々な人が集まり、夜の街を徘徊する女たちを餌食にする変質者も密かに牙を研ぐことができる。映画は1983年にアラスカで発覚した大量殺人事件を追う。善良な市民として暮らす犯人、わずかな手がかりを元に現在と過去を結びつけていく刑事。沈んだ映像が犯人の心の闇と被害者の絶望を象徴し、邪悪なエネルギーとなって刑事に伝わっていく。
保護された娼婦・シンディはハンセンを告発、州警察のジャックは彼女の証言を元にハンセンの身辺を洗う。身元不明死体が連続して発見された事件との関連に気づいたジャックはシンディに協力を求める。
ハンセンは前科はあるが、今では市警察も認めるほどの模範的な住民。だが、娼婦ばかりを監禁・レイプしたうえ猟銃で射殺するという残忍な裏の顔を持つ。飛行機に乗せて原野で犯行に及び死体を埋めるために、なかなか警察の手が及ばず、ジャックたちは後手後手に回る。論理的な仮説は立てられるが証拠はない、そんな状況で右往左往しているうちにハンセンの魔手は唯一の証人であるシンディに再び伸びる。そのあたりの描写はあくまで感情を抑制し、サスペンスを盛り上げるような演出はしない。
ハンセンを演じたジョン・キューザックは狂気をあえて封じ込めて、人殺しが日常と化した男のダークサイドを表現する。
お勧め度=★★(★★★★★が最高)「フローズン・グラウンド 」についての詳細は、http://d.hatena.ne.jp/otello/20130822を参考にしてください。
本日はもう1本
「マリリン・モンロー 瞳の中の秘密」です。

マリリン・モンローのシンボルともいえる左ほおのホクロ。デビュー間もないころの写真にはなかったり、彼女のセックスアピールの証となった後も、時に大きくなったり小さくなったり、薄くなったり消えたり。シチュエーションに応じて微妙に見かけが変わっていることに初めて気づいた。映画ではホクロの件には触れていないが、その変化は、彼女の波乱万丈の人生を象徴しているかのようだ。
マリリン・モンローについて書かれ出版された本は1000冊を超え、最近2箱分の手紙が見つかる。そこには彼女の夢、努力、不満、孤独などが赤裸々につづられ、彼女の知られざる一面を知ることができる。
20世紀FOXのカメラテストを受けたマリリンは大物プロデューサー・ザナックと寝て役を与えられる。彼女は"枕営業"を恥じてはおらず、スターになるためのステップと割り切っている。もちろん他の女優以上にレッスンに励み、チャンスが来た時の準備は怠らない。さらに無名時代のヌード写真流出事件も利用して売名を図る。
後に、NYで本格的に演技を学び、自己の深層を見つめる作業に没頭する。その先にあるのは誰にも理解されない不安と恐怖。だが、契約を棒に振って出席したJFKのパーティでも、やっぱりセクシーなマリリンを演じている矛盾。マリリン・モンローという虚像の大きさに耐えきれなかった彼女の苦悩の深さは、"alone!!!!!!"の言葉の後に付いた感嘆符の数が物語っていた。
お勧め度=★★(★★★★★が最高)「マリリン・モンロー 瞳の中の秘密」についての詳細は、http://d.hatena.ne.jp/otello/20130831を参考にしてください。