2012年9月1日土曜日

こんな映画は見ちゃいけない!(9/1)

本日、とりあげる作品は

「最強のふたり」 です。

カネ持ちだからといって媚びず、障害者だからといって同情しない。
教養がなく礼儀も知らず思った言葉をズケズケと口にする青年に、う
わべだけを取り繕った上流の生活に飽きていた車いすの富豪は新鮮な
魅力を覚えていく。古典美術・音楽の造詣など自分を知的に見せるた
めの虚構にすぎず、感性を絵具に託してキャンバスに塗りたくりダン
スミュージックに身を委ねることこそアートの役割だと気づく過程が
コミカルで楽しい。そして階級を否定し権威主義を徹底的に笑い飛ば
すところが痛快だ。

新しい介護人を募集中のフィリップは、失業手当欲しさに面接に来た
ドリスを雇う。貴族の屋敷のようなフィリップの豪邸に目を丸くする
ドリスだが、物おじせず構えない態度をフィリップに気にいられる。

ほしかったのは介護人ではなく友だち。フィリップは障害を茶化して
からかうドリスに、まだ誰とでも気軽に胸の内を打ち明けられた少年
時代を思い出したに違いない。エリートの道を歩み常に特別な存在に
扱われてきたであろう彼に対して、ドリスはあくまで人として"対等"
の姿勢を崩さない。

冒頭のカーチェイスに始まり、フィリップの文通相手との恋、一方で
貧困など社会問題をも絡めたエピソードの数々は最後まで興味を引く。
大空をパラグライダーで駆け巡って魂の解放を感じるシーンに、心の
あり方で人生はいくらでも豊かになると実感させてくれる作品だった。

お勧め度=★★★*(★★★★★が最高)

「最強のふたり」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120621

を参考にしてください。

本日はもう1本

「カルロス 第一部」 です。

見知らぬ他人にドアを開け、大使館ですら出入り自由。セキュリティ
意識が薄かった'70年代、人々の警戒心の薄さが印象的だ。それらの
シーンに、良くも悪くもアナログのニオイが強烈にスクリーンから漂
ってくる。物語は、後に伝説の殺し屋となる男がいかにして生まれた
かに焦点を当て、革命という名のテロが欧州に蔓延していた時代を描
く。ソ連式社会主義ではなくマルクスの原点に立ち戻り、資本主義を
倒して人民を解放する理想、それらがまだ現実可能な夢であるかのご
とく語られていたころの空気がリアルで、まるで世界を揺るがす事件
の真っただ中に飛びこんだような緊迫感を覚える。

パレスチナ人民解放戦線のリーダー・ハダトの指令でロンドンの実業
家暗殺に向かったイリッチは、パリ支部のメンバーに認められる。そ
の後、ハーグ仏大使館占拠中の日本赤軍支援に、爆弾テロを起こす。

引き金を引くのも爆弾を投げ込むのもためらわないイリッチはたちま
ち頭角を現し、西ドイツの組織とも共闘する。しかし、ドイツ人が純
粋に打倒帝国主義と新左翼思想による革命を目指しているのに、イリ
ッチはどこか安っぽいヒロイズムを求めている。そして武器を手にす
ることで無抵抗の人々をひれ伏せさせる万能感に酔いしれる。

映画は欧州各地から中東までめまぐるしく舞台を変え、カルロスが残
した足跡を追う。その過程で人々のファッション、文化、科学技術、
街並みなどあらゆる点においてディテールまで当時を再現する。

お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

「カルロス 第一部」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120726
「カルロス 第二部」
http://d.hatena.ne.jp/otello/20120727
「カルロス 第三部」
http://d.hatena.ne.jp/otello/20120728

を参考にしてください。

本日はもう1本

「映画 ひみつのアッコちゃん」 です。

お化粧してきれいになりたい! 11歳の少女の願いが叶う。憧れてい
た大人の世界、それはバッチリメークして華やかな職業に就くことだ
と思っていたのに、小さく地道な作業の繰り返しと積み重ねだった現
実。同時に小学生ならではの観点で、"正しい行い"と、言いたくて
も言えなかった真実を堂々と言葉にする。映画は、大人の姿になった
ヒロインが、「会社」という社会を通して、働く意義を学んでいく過
程を描く。「人の話をきちんと聞く」「暴力はいけない」といった正
論で押し切るヒロインは魅力たっぷり。中身は子供で見かけは成人の
女を綾瀬はるかがチャーミングに演じ切る。

鏡の精にもらったコンパクトで10年後の自分に変身した小学5年生のア
ッコは、百貨店のコスメ売り場で化粧品開発部員の尚人にスカウトさ
れ、彼のオフィスに出入りするようになる。

アッコが身にまとうカラフルでキュートな衣装はまさに女の子の夢。
服に元気をもらうと高揚感が表情にあふれ、尚人の同僚にも伝染して
いく。尚人はあきらめかけていた新製品の開発に着手し、筆頭株主に
頭を下げ、M&Aを図る事業家との対決に向かう。

尚人に同行するアッコは尚人にはなかった視点で相手に訴え、小学校
で習う道徳・倫理を買収者にぶつける。もはや忘れてしまった、人を
信じる心や正直な生き方がアッコの口から語られるのだが、彼女の論
点のずれたボケ方が絶妙で、思わず笑い転げてしまった。

お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

「映画 ひみつのアッコちゃん」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120825

を参考にしてください。

本日はもう1本

「モンサントの不自然な食べもの」 です。

そもそも交配自体が遺伝子の組み換えに他ならないが、直接人工的に
不自然な形で生き物の性質を変えるところに、得体のしれない不気味
さを感じているというのが"普通の市民"の感覚だ。それは絶対に安
全なのか、大丈夫と言い切るならば作っている会社の経営陣や認可し
た政治家や官僚に食べさせればいいはずだが、きっと高給を食む彼ら
はそんなものには見向きもせず、自らはオーガニックのものしか口に
しないのだろう。映画はトウモロコシなどの穀物に農薬耐性を持たせ
るために遺伝子に手を加え、その種子を販売して巨利を得る米国企業
のモラルを問うていく。

ジャーナリストのマリーはバイオケミカルの多国籍企業・モンサント
社を調べるうちに、ここが遺伝子組み換え(GM)作物で世界の食料市
場を支配しようとする黒いうわさを耳にする。

膨大なネット上の資料を調べ、世界中を飛び回って取材し、巨悪と位
置付けたモンサント社に一人戦いを挑むマリー。だがつかんだ情報は、
データに不備があるにもかかわらずモンサントのロビー活動で政治家
が骨抜きにされた上、GM作物が米国内では合法化され、規制の甘い発
展途上国では野放し状態になっている現実。

さらに風媒介で交配してできた種子でも、自社製品の遺伝子が含まれ
ていれば特許侵害で訴えて反対派の農家をつぶそうとするモンサント
の強引で悪辣な手法を告発。もうGM作物は食べたくなくなった。

お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

「モンサントの不自然な食べもの」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120719

を参考にしてください。