2013年9月12日木曜日

こんな映画は見ちゃいけない!(9/12)

本日、とりあげる作品は
「共喰い」です。

快感の極致に達すると暴力の衝動を抑えきれなくなり、思わず相手を殴り首を絞めてしまう。そんな性的嗜好の父親を持つ息子は、自分にも同じ血が流れているのを自覚し、嫌悪し、苦悩する。倦怠、諦観、絶望……人間が吐き出すあらゆる負のエネルギーが堆積し腐臭を放つ川辺の街、映画はそこから抜け出せず悶々とする高校生の日常を通じ、生きるとは業を背負うことだと訴える。好きな女といるのに楽しくない、セックスしても愛はない、何より息苦しくなる環境で、己の本性を知ってしまった主人公の表情が切なく哀しい。
父・円とその愛人・琴子の3人で暮らす遠馬は、幼馴染の千種とのセックスに自信が持てず、産みの母・仁子に愚痴をこぼす。ある日、千種の首を絞めてしまい嫌われる。一方で琴子は妊娠したと遠馬に告げる。
女たちは、殴られ首を絞められる恐怖に死を覚悟したはず。しかし、なぜか彼女たちは円となかなか別れられず、仁子も琴子も妊娠するまでは黙って耐えている。それほどまでに円が魅力的なのか、映像からはうかがい知れない。ここで描かれるセックスには尊敬や慈しみはまったくなく、裸の肉体を重ね、交合し、射精するばかり。千種に至っては、遠馬を受け入れても痛みを感じるのみ。
あまりにも身勝手なセックスを女たちに強要し繰り返す父子に共感できる要素はないが、ただ性欲を発散させるために生きている2人の破滅的な姿には滑稽さが漂う。
お勧め度=★★(★★★★★が最高)「共喰い」についての詳細は、http://d.hatena.ne.jp/otello/201300909を参考にしてください。
本日はもう1本
「ジンジャーの朝」です。

迫りくる核戦争の危機、終末のイメージは多感な年ごろの少女に重く暗い影を落としていく。同時に周囲の大人たちが俗物に見え始め、自分だけがピュアな存在だと思い込む。物語は、同じ日に同じ病院で生まれた2人の女の子が双子の姉妹のように育ち、やがてそれぞれの道を歩みだすまでを描く。なんでも話し合った、秘密も共有した、いつも一緒にいた、だが禁断の一線を越えてしまった。様々な体験で視野は広がったが、思い通りに進まないことの多さに苛立ちは募るばかり。そんなヒロインが見つけた、大人への通過儀礼というにはあまりにも残酷な真実。揺れ動く彼女の感情をエル・ファニングが繊細に演じる。
ジンジャーとローザは将来の夢を無邪気に語り合う17歳。反核・反戦集会に顔を出したりしながらも日々過ごしている。ある日、ジンジャーは父・ローランドとローザが付き合っているのを知る。
いつ始まるともしれない核戦争にジンジャーは気が気ではない。一方で周りの人々は、人類滅亡の瀬戸際であるのに関心が低く、その態度がジンジャーには腹立たしい。特に、かつてアナーキストとして投獄された経験もあるローランドは"人生を楽しめ"と、個人の生活を優先させる。それどころか、家出してきたジンジャーを泊め、隣の部屋でローザとセックスする始末。
世界が核戦争で壊れる前に、家族や友人関係といった最小単位の世界が崩壊する皮肉。親友と父に裏切られたジンジャーの苦悩が切ない。
お勧め度=★★(★★★★★が最高)「ジンジャーの朝」についての詳細は、http://d.hatena.ne.jp/otello/20130911を参考にしてください。