2013年9月19日木曜日

こんな映画は見ちゃいけない!(9/19)

本日、とりあげる作品は
「ウルヴァリン:SAMURAI」です。

三助おばさんにたわしでこすられたり、寺の坊さんがみな刺青を入れたヤクザだったり、剣道稽古や忍者軍団がやたら空中で回転したり、場末のラブホテルの奇妙なコンセプトに面食らったり……。不老不死を誇るミュータントも、古い因習・伝統と洗練された技術力が混在する不思議の国・ニッポンでのアウェイ戦はハプニングに見舞われっぱなし。来日経験がない米国人の日本へのイメージを見事に再現している。むしろ笑いを誘うほど戯画化されたシチュエーションに対するディテールへのこだわりが、映画にユーモアをもたらしている。
ウルヴァリンは日本人実業家・矢志田に東京に呼ばれが、重病の矢志田はウルヴァリンに死を与えると言い残して息絶える。ウルヴァリンは葬儀会場で誘拐された矢志田の孫娘・マリコを救い逃亡する。
永遠に生き続けるのは永遠の苦みなのか。愛した者にはいつも先立たれ、思い出はいつしか悪夢にかわって熟睡できる夜はない。そんなウルヴァリンが、初めて治癒能力を失い、傷ついていく。気を失うほどの痛みと出血が限りある命の証。無為な長生よりは目的のある死を選ぶ、その精神が人間を進化させてきたとウルヴァリンは知る。
田舎の村人と交流したウルヴァリンは、限りある命だからこそ他人と交わりを大切にし、精いっぱい生きる充実感を学んでいく。そして、自分を必要とする日本人と積極的にかかわって己の人生に意味を持たせようとする。この戦いはウルヴァリンの「自分探しの旅」なのだ。
お勧め度=★★★(★★★★★が最高)「ウルヴァリン:SAMURAI」についての詳細は、http://d.hatena.ne.jp/otello/20130917を参考にしてください。
本日はもう1本
「許されざる者」です。

馬には振り落とされる。刀は錆びている。ぶちのめされて顔を切りつけられる。何よりも死を恐れている。伝説の人斬りと呼ばれた男もすでに老い、日々の暮らしに窮するただの開拓農民。だが、作物が実らず子供たちに満足な食料を与えられないほどの貧しさに追い詰められたとき、亡き妻との約束を破って再び武器を手にする。その過程で、主人公たちが地平線まで広がる荒涼とした大地を渡り、森や小川沿いの道なき道をひたすら進む壮大なスケールの映像に圧倒される。そこに、弱き者、虐げられた者、すべてを失った者、無様でみじめで女々しいけれど人間としての誇りまで捨ててない人々の魂が慟哭となって共鳴し、巨大な感情のうねりとなってスクリーンにあふれ出す。
辺境の街で女郎が農民に顔を切られるが、警察署長の大石は穏便に事を収めようとする。復讐を誓った女郎仲間たちは犯人に懸賞をかけ、かつての戦友・金吾に誘われた元反政府派の十兵衛も街に向かう。
女郎の顔を切った男は賠償し、彼の相棒は悔いて詫びを入れる。強権的な大石は賞金稼ぎから街の秩序を守ろうとしている。女郎屋の主人も当時の価値観に照らせばまっとうに商売している。ある意味、この街に死に値する者は誰もいない。
一方で、もう人を殺めたくないと願っていた十兵衛がカネ目当てに街にやってくる。煮え切らない態度を取り続け、最後まで迷いを吹っ切れない十兵衛の表情に、"生きる"という業を背負った人間の大いなる苦悩が凝縮されていた。
お勧め度=★★(★★★★★が最高)「許されざる者」についての詳細は、http://d.hatena.ne.jp/otello/20130916を参考にしてください。