2013年10月24日木曜日

こんな映画は見ちゃいけない!(10/24)

本日、とりあげる作品は
「マダム・マーマレードの異常な謎 出題編」です。

映画の中で提示された謎を、与えられたヒントを元に観客が上映時間内に解く。しかも3分間の"シンキングタイム"を3度挟む思いがけない展開は、"史上初"らしい。映画は、30年前に死んだ高名な映画監督の未公開フィルムに残された「遺言」の解明を依頼された"謎解き屋"と共にそのフィルムを見る設定の下、趣向を凝らした3本の短編を楽しめる構成になっている。芝居がかったヒロインをはじめ胡散臭そうな登場人物がそろった現在のパートに比べ、劇中劇は時代を感じさせる古風な作風。そんな手の込んだ作りに、遊園地のミステリーツアーに参加しているような高揚感を覚える。
"解けない謎はない"と豪語するマダム・マーマレードは古い豪邸に招待され、世界的名声を得ていた藤堂監督の遺族から彼の遺書の真意を探り出してくれと頼まれる。手がかりは「最初のセリフ」のみ。
1本目の「つむじ風」は、好きになってはいけない人に恋をした少女が、デビュー当時の吉永小百合を連想させるきらめきで繊細な心を表現している。気持ちは直接口にするか手紙でしか伝えられないもどかしさが初々しい。2本目の「鏡」は、鏡の中に閉じ込められた女に強く惹かれた男が、彼女を救い出そうとするうちに邪悪な怨念に呪われていく。
3本目の、頭の弱い少女の母への思いを描いた「やまわろわ」は、これだけ独立させても通用するほどの情愛にあふれた作品で、少女の一途な感情が胸を打った。
お勧め度=★★★(★★★★★が最高)「マダム・マーマレードの異常な謎 出題編」についての詳細は、http://d.hatena.ne.jp/otello/20131003を参考にしてください。
本日はもう1本
「人類資金」です。

騙しているつもりが利用され、操っているはずが躍らされている。戦後、さまざまな巨額の詐欺事件が起きた「M資金」。映画は、マネーゲーム資金と堕した「M資金」を正しい使い道に戻そうとする戦後世代の奮闘を描く。世界の富の99%を独占する富裕層と、数十億人の貧困層。それらの対立項を軸に、ある種の正義感に目覚めた主人公の冒険の旅は、コンゲームとアクションが入り混じりより複雑にねじれていく。だが、東京・極東ロシア・東南アジア・NYと地球を半周する壮大なスケールに見合う内容に乏しく、「人」に投資してこそカネは生きるというテーマにたどり着くまで迷走が続く。
「M資金」をネタに詐欺を繰り返す真船は東南アジア系の男・セキを通じ本物の「M資金」に関係するグループに呼び出され、Mと名乗る責任者から「M資金」の管理財団から10兆円を詐取する計画を依頼される。
その後、真船やセキの前に自衛隊のスパイ組織や米国の殺し屋が現れたり、「M資金」を"相続"した老人などの思惑が絡むなど、ますます全体像が見えづらくなっていく。さらにセキの故郷である極貧国の資源開発を利用して国際マーケットに仕手戦を仕掛けるなど、真船は自らの詐欺行為を"良心の戦い"と定義づけていく。
ところがそのエピソードの数々は極めて大雑把で、"ホラ話にリアリティを持たせるのはディテール"のルールを無視している。パソコンで取引する時代に50億円分の札束を用意する必要があるのか。。。
お勧め度=★★(★★★★★が最高)「人類資金」についての詳細は、http://d.hatena.ne.jp/otello/20131020を参考にしてください。
本日はもう1本
「アルカナ」です。

心霊現象なのかまったく新しい怪奇現象なのか、臨死体験した人間は自らの分身を体から分離させ、分身は独立した人格として活動する。生気のない顔ながら卓越した身体能力で人間を襲い、その心臓を糧として闇の世界で生きている分身。映画はそんな彼らが起こした惨殺事件を追う刑事が記憶喪失の少女とかかわるうちに、霊が見える能力で覚える疎外感を共有し、お互いに理解を深めていく過程を描く。スタイリッシュな映像を短いカットにしてスピーディに畳み掛けてくる。
死者の霊が見える刑事の村上は、大量殺人事件の現場で逮捕された少女も同じ悩みを持つと知り、彼女に接近する。自彼女に、村上はマキと名付け、殺人犯と決めつける同僚から守ろうとする。
一方、警視庁の心霊事件専門班が、惨殺事件は分身の仕業と断定、村上の捜査に介入してくる。同時に、マキとそっくりのさつきが現れ、マキの正体が明らかになっていく。普通は分身になるとゾンビのような邪悪な面を見せるのに、彼女たちの場合、さつきが親不孝者なのに対しマキは気立てがよくおとなしい。分身のほうがより愛される存在という皮肉が、本体と分身の価値の差に疑問を投げかける。
しかし映画はそれらの要素を取り留めなく羅列しているのみ。村上が爆弾犯を追うアクションの疾走感や、最強分身・ミチルとの格闘場面の躍動感は洗練されていただけに、もう少しきちんとした構成の脚本を作ってほしかった。
お勧め度=★★(★★★★★が最高)「アルカナ」についての詳細は、http://d.hatena.ne.jp/otello/20131021を参考にしてください。