2012年10月27日土曜日

こんな映画は見ちゃいけない!(10/27)

本日、とりあげる作品は

「ザ・レイド」 です。

撃つ、絞める、斬る、殴る、刺す、打つ、蹴る、投げる、へし折るetc.
チンピラと警官がマシンガンをぶっ放し、スナイパーが狙撃し、拳
銃を乱射する激しい銃撃戦。ナタを振りおろし、ナイフで切りつけ、
トンファを突きあげる大乱闘。その上達人同士の果たし合いまで100分
間のノンストップ・バトルアクションは瞬きを忘れてしまうほどの速
さと力強さを備えている。防御と攻撃が表裏一体となった流麗かつ実
践的なインドネシアの必殺拳・シラットを基本にした格闘シーンは目
を見張るアイデアにあふれていた。

ギャングのボスが管理する高層アパートに20名の武装警官隊が突入す
る。しかし退路を絶たれた警官隊は1人ずつ落命していく。そんな中、
若き隊員・ラマは得意の武術でチンピラどもを倒していく。

狭い廊下で刃物を振りかざす10人以上のチンピラに単身突撃するラマ。
体のあらゆる部分を使って打撃を加え、関節をひねり、急所を抉って
いく。同時に負傷した仲間をかばいながら、床にもぐり、窓から飛び、
壁に隠れ、数的に勝るギャングたちを次々に仕留めていく。火器に頼
らず、かといって相手の虚を突くでもなく、イーブンな条件で闘いを
挑むあたり、男の美学すら感じさせてくれる。

ラマを演じるイコ・ウワイスをはじめ、主要登場人物が驚異的な身体
能力で危険なスタントをみせるサービス精神と、ひたすら活劇に徹し
た演出の潔さに、最後までスクリーンにくぎ付けになってしまった。

お勧め度=★★★★(★★★★★が最高)

「ザ・レイド」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120915

を参考にしてください。

本日はもう1本

「危険なメソッド」 です。

目玉をむき出しにし、下あごを突出し、眉間にしわを寄せ、頬を引き
つらせる。顔中の筋肉を総動員して、次々と湧き上がる恐怖と怒り、
不安と疑念、苛立ちと憎しみといった感情を表現する。激しいヒステ
リー症状で精神病院に収容されたヒロインを演じるキーラ・ナイトレ
イの恐ろしいまでに気迫のこもった表情の変化は、リアリティを超え
た圧倒的な迫力。人間の胸の奥に巣食う闇の部分の硬さと脆さと攻撃
性を見事に再現していた。

スイスの精神科医のユングは美しい患者・ザビーナにフロイトの対話
療法を試み、改善に成功する。数年後ウィーンのフロイトを訪ね初対
面で意気投合、フロイトはユングを精神分析学の後継者に指名する。

フロイトは薬物依存症の精神分析医・グロスの身柄をユングに託すが、
グロスの"快楽に身をゆだねろ"という言葉がユングのザビーナに対
する思いに火をつける。ユングはザビーナへの欲望を満たし、ザビー
ナもまた己のリビドーに従いつつ精神医学への道を邁進する。「精神
科医が精神を病む」「精神を病んだ者が精神科医を目指す」。他人の
心を治療する立場である医師の心も壊れる一見矛盾した構図が、精神
医学の危うさとそれにもまして精神の複雑さを象徴する。

その後も、ユングはザビーナとも離縁復縁を繰り返したり新たな愛人
を作ったりと、"抑圧"を解放するのに忙しい。ユング本人は、そん
な自身の気持ちをどのように解釈していたのだろうか。。。

お勧め度=★★★*(★★★★★が最高)

「危険なメソッド」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120901

を参考にしてください。

本日はもう1本

「声をかくす人」 です。

女はすでに死を覚悟しているのだろう、自分の命と引き換えにしてで
も守るべきもののために。有罪を決定づける証拠は薄いが、心を閉ざ
したままの彼女の意志は固い。映画は大統領暗殺幇助の容疑で起訴さ
れた未亡人の人権を守り、法に則って裁きを受けさせようとした若き
弁護士の孤独な戦いを描く。検事も陪審も裁判官も傍聴席もみな大統
領支持者の四面楚歌状態で、被告を有罪にすれば弁護能力を問われ、
無罪を勝ち取れば世間を敵に回すという苦境に立たされた主人公は、
あくまで真実を探ることで、感情に流されない法の適用を訴えていく。

リンカーン大統領が南部の残党に射殺され、犯人数名が逮捕される。
その中に、彼らの密会に場を提供した寡婦・メアリーもいた。元北軍
将校のエイキンは無実を主張するメアリーの弁護を依頼される。

当然エイキンも暗殺犯を死刑にしたいと考えていたが、被告がだれで
あっても等しく弁護される権利を持つ合衆国憲法の精神を順守する決
意を固める。ところが、検察側証人の証言は矛盾だらけ、しかも民間
人なのに軍法会議にかけられる形のみの裁判に違和感を覚え、弁護士
としての責務に目覚めていく。

確証がないのに最初から死刑ありきの茶番劇のさらしものにされたメ
アリー。「戦時に法は沈黙する」、その言葉は"テロ国家"に侵攻し
独裁者を絞首台に送った現代の米国人に胸にも突き刺さるはず。あの
戦争と裁判は果たして正当な手続きを踏んでいたのかと。。。

お勧め度=★★★*(★★★★★が最高)

「声をかくす人」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120907

を参考にしてください。

本日はもう1本

「終の信託」 です。

人を死なせる権限が果たして医者にあるのか。病気やけがに苦しむ人
を助けるのが使命ならば、患者が抱える耐えがたい肉体的精神的苦痛
から解放してやるのもまた仕事と信じる女性医師。一方、彼女の行為
を"殺人"と断罪しようとする検事。映画は、患者と医師の間に流れ
る穏やかな時間と、検事と医師の間に張りつめた刺々しいテンション
を対比させ、医師は患者の尊厳をどう守るべきかを問う。もちろん正
解はなく結末も釈然としない。それでも、確実に待ちうける"死"の
宿命に対しどんな心構えをしなければならないか考えさせられる。

呼吸器科の医師・綾乃は重症の喘息患者・江木から延命治療しないよ
う歎願される。ある日、江木が救急搬送され、すでに脳機能は低下し
回復の見込みはない彼の人工呼吸装置を綾乃ははずす。

不倫と自殺未遂で悩んでいた綾乃を江木は優しく勇気づけ、医師と患
者の関係以上の思いがふたりの間には芽生えている。だからこそ江木
は延命拒否を綾乃に頼んだのだが、あくまでふたりだけが知ること。
それを検察に呼び出された綾乃が待合室で回顧する構成は、もしかし
たら江木とのエピソードは綾乃の作り話かもと思わせる効果があり、
心理的に不安定な綾乃の危うさが垣間見えてくる。

そして検事は彼女に質問し事の本質をついていく。検事の言葉の刃を
綾乃がいかにかわすか、スリリングな密室の会話劇は、一瞬たりとも
気が抜けない濃密な映像となり見る者をスクリーンにくぎ付けにする。

お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

「終の信託」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20121019

を参考にしてください。

本日はもう1本

「009 RE:CYBORG」 です。

「正義」とは、今やその単語を口にする者にとっての真実でしかなく、
対立する他者の「正義」は排除すべき邪念。価値観が混沌とした現代、
世界中で起きるテロの連鎖は未曽有の様相を呈し、もはや人の叡智で
は解決できない。そこは神の領域なのか。いや、神ですら人間の脳が
作った幻覚、ではいったい何がテロリストたちの意識を支配し行動に
至らしめたのか。映画は、何故自分は存在するのか、生きているのか、
自らのアイデンティティを繰り返し問う主人公を通じて、人生の意味
と自己犠牲の美しさを謳う。

世界各地の大都市で高層ビルが相次いで爆破テロの標的にされる。や
がて六本木ヒルズも攻撃を受けるが、現場にいたジョーは003と005に
よって009の能力を覚醒され、ギルモア博士の元に召集される。

ギルモア博士と袂を分かった002は米国政府のスパイになり、同じく英
国諜報員となった008からテロの実行犯はみな「彼の声」を聞いたとい
う情報を得る。一方で、国際社会に緊張状態をもたらして影響力を高
めようとするイスラエルと米国の陰謀説も飛び交う。事件のカギを握
る金髪の少女と天使の化石、更なる混迷と混沌の中で、新たな破壊を
止めるべく009たちが奮闘する。

ビルの倒壊、高速飛行のステルス機上での格闘などのアクションシー
ンは、3Dで再現された細密で圧倒的な情報量の映像で視界を覆い、研
ぎ澄まされたサウンドが臨場感をもたらす。

お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

「009 RE:CYBORG」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20121018

を参考にしてください。

2012年10月25日木曜日

こんな映画は見ちゃいけない!(10/25)

本日、とりあげる作品は

「アルゴ」 です。

一つ間違えれば自分の命だけでは済まない。絶体絶命の危機の中に身
を投じ平然と嘘をつきとおす度胸を持つ男は、身体能力や銃器に頼る
のではなく、アイデアと機転で同朋を救い出す。その、あまりにも突
飛な作戦は味方ですら成功するとは思わないほど、ゆえに敵は見事に
欺かれる。派手さはないがユーモラス、アクションはないがスリリン
グ、そして何よりイメージで物語を紡ぐ"映画"というメディアの力
をあらためて見せつけられた。

'79年、イラン革命防衛隊に占拠された米国大使館から抜け出した6人
の職員はカナダ大使の私邸に匿われる。米国務省とCIAは人質奪還のス
ペシャリスト・トニーに彼らの救出を命じる。

トニーは彼らを映画のロケハン隊に偽装して出国させる計画を立案す
る。実際に脚本を買い、製作発表を行い、いかにも大作映画のプトジ
ェクトが胎動とまず米国内でプロパガンダを打つ。その後イランに入
国、6人に徹底的に偽の身分を覚えこませる。ヒゲ面のもっさりした外
見でトニーの"切れ者"ぶりをカムフラージュする一方、ハリウッド
の虚栄とCIA上層部の官僚体質を暴き出し、現場で苦労する工作員と対
比させる構成が小気味よい。

極限にまで高まったトニーと職員たちの不安と緊張だけでなく、あえ
てヒロイズムを避け、シリアスなのにどこかとぼけた味わいを残すと
ころに好感が持てた。

お勧め度=★★★*(★★★★★が最高)

「アルゴ」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120927

を参考にしてください。

本日はもう1本

「ペンギン夫婦の作りかた」 です。

辛すぎずくどすぎず、おかずに和えてもご飯にかけても、食材の風味
を損なうことなく独特の香味を鼻孔の奥に残す。中華料理店なら普通
に置いてあるラー油にさまざまな具材を加えて"ラー油を食べる"発
想で新たな需要を産んだ「石垣島ラー油」。それはひと組のカップル
の、素朴だけれど斬新なアイデアの賜物だった……。映画は、深く信
頼し合うふたりが厳しい現実を克服し、前向きに生きる姿を描く。

歩美と中国人夫・暁江は勤務先の倒産を機に石垣島に旅行、すっかり
石垣島が気にいったふたりは永住を決意する。歩美は飲食店で働くう
ちに現地の農産物で作るラー油を思いつき、フリーマーケットで売る。

物語は帰化申請する暁江のために夫婦で役人の面接を受けるふたりが、
回想の中でどれほどお互いを大切にし、いかにして大ヒット商品であ
る「石垣島ラー油」が生みだしたかを再現する。査問官は偽装結婚を疑
う態度を崩さず、さらにラー油製造場所を強制捜査したりと、あくま
で東京から来たよそ者と中国人に対する不信感を隠さない。そのあた
りの緊迫した空気と、歩美と暁江の苦労ですら楽しもうとするラブラ
ブな日常や帰化申請に向けて想定問答を繰り返す軽妙なシーンがバラ
ンスを取る。

ただ、もともと原作に波乱万丈の起伏があまりないのだろう、査問官
や歩美に勘違いさせてコミカルな味付けをしてアクセントをつけるが、
設定がベタ過ぎて笑えなかった。。。

お勧め度=★★(★★★★★が最高)

「ペンギン夫婦の作りかた」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20121022

を参考にしてください。

本日はもう1本

「伏 鉄砲娘の捕物帳」 です。

猟師として抜群の腕前を持つ娘と、物の怪の本性を隠して生きる男。
ふたりは決して結ばれてはならない関係でありながら、出会い、惹か
れあい、そして運命に身をゆだねていく。並の作家ならば"道ならぬ
恋"に落ちた彼らが、苦悩し、二者択一を迫られつつも心の声に従う、
もしくは引き離される姿を描くはず。ところが、映画はそうした手垢
のついた展開とは明確に一線を画し、予期せぬ方向に舵を切る。

猟師の孫娘・浜路は江戸で犬の面をかぶった男・信乃に助けられ、兄
・道節の長屋に案内される。道節は、「伏」と呼ばれる魔物を退治し
て報奨金を狙っているが、さっそく浜路を連れて吉原に伏狩りに行く。

吉原に着く早々道節は客引きに誘われて仕事を放棄、一人になった浜
路は運よく信乃と再会、着物を買ってもらったりする。やがて花魁道
中が始まると、見物のために行列に近づいた道節が躓いた弾みで浜路
を花魁に投げつけ、花魁の正体が伏だとばれてしまう。その後もあら
ゆる場面で必然性のないことが突然起こり、物語を強引に引っ張って
いく。さらに、瓦版発行者の冥土という娘が登場するが、服装が現代
のメイド風なのもセンスの悪いギャグとしか思えない。

愛を謳うでも人生に葛藤するでもなく、目を見張るような映像を見せ
るわけでもない雑なシーンが続き、「南総里見八犬伝」の名を汚して
いく。作り手の主張やテーマのみならず、内容もまったく理解できな
い稀有な作品だった。

お勧め度=★*(★★★★★が最高)

「伏 鉄砲娘の捕物帳」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20121023

を参考にしてください。

本日はもう1本

「宇宙人王さんとの遭遇」 です。

心の奥まで見透かすような黒光りする瞳、それは真実を語っているの
か、狡猾さを覆い隠そうとしているのか。時に弱々しく慈悲を乞うが、
自説を絶対に曲げない強い意志もにじませる。驚きや怒りには反射的
に反応し頭部を鶏冠のように広げるが、そのほかはほとんど感情が読
み取れない。物語はそんな宇宙人を秘密機関のエージェントが取り調
べる過程で、"エイリアン"の扱いについて考察を加える。

中国語翻訳者・ガイアは、中国語を話す宇宙人・ワンさんの通訳を引
き受ける。ガイアはキルティ捜査官の執拗な尋問に嫌悪感を抱き、文
化交流のために地球にきたと繰り返すがワンさんに同情していく。

ワンさんとは、今や世界中で政治的経済的な脅威となった中国人の象
徴。民族・出身で偏見や差別はいけないと頭では理解しているが、一
度甘い顔を見せてしまうと食い物にされてしまうのではといった不安。
イタリアではまだ宇宙人を使ったジョークで済まされるのかもしれな
いが、すでに池袋や新宿といった「新興チャイナタウン」が現実とな
っている日本では、より切実なリアリティで見る者に迫ってくる。

結局、異文化や異文明と出会ったとき、相手に良心や善意を期待する
のは墓穴を掘る結果になる。中国語を話す者を信用するなというこの
作品の教訓は、領土問題でくすぶっている日本人にとっては共感を呼
ぶ部分が少なからずあるはずだ。もちろんあらゆる中国人を敵視する
後味の悪さは否めないが。。。

お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

「宇宙人王さんとの遭遇」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20121024

を参考にしてください。

2012年10月21日日曜日

<今週の新刊>2年半ぶり「バガボンド」 「けいおん!」高校生編も


新刊コミックス情報をお伝えする「今週の新刊」。

10月22~27日に発売される主なコミックスは約320タイトル。

井上雄彦さんが宮本武蔵の生涯を描く「バガボンド」や実写映画化された「宇宙兄弟」、アニメ化された4コママンガ「けいおん!」の"高校編"「けいおん! highschool」などが登場する。


「バガボンド」は10年5月以来、約2年半ぶりの新刊となる。

【写真特集】劇場版も大ヒットした「けいおん!」 監督のインタビューも

「バガボンド」34巻と「宇宙兄弟」19巻は23日に登場。

「宇宙兄弟」は絵の具や塗り絵などのセットが付く限定版も同時発売される。

23日はほかにも、2度にわたってアニメ化された野球マンガ「おおきく振りかぶって」20巻、 監督視点でストーリーが展開する異色のサッカーマンガ「GIANT KILLING」25巻、無職のさえない青年と中学生のいとこの少女の共同生活を描く「高杉さん家のおべんとう」6巻も発売。


24日は「日常」8巻や「うぽって!!」4巻、「そらのおとしもの」16巻などアニメ化された人気作が続々登場する。

25日は27日公開予定の劇場版3Dアニメのコミカライズ「009 RE:CYBORG」1巻が発売。

27日は「けいおん! highschool」のほか、鎌池和馬さんの人気ライトノベルのスピンオフ「とある魔術の禁書目録外伝 とある科学の超電磁砲」8巻、人気ゲーム「アイドルマスター」のスピンオフでアニメ化が決定している「ぷちます!」4巻が登場。


「ぷちます!」はチャーム付き特装版が同時発売される。

(毎日新聞デジタル)

※発売日は配送の都合などで変更の可能性があります。



2012年10月20日土曜日

こんな映画は見ちゃいけない!(10/20)

本日、とりあげる作品は

「思秋期」 です。

寂しさを紛らせるために酒に溺れ、弱さを隠すために暴れ、小さなプ
ライドを満たすために悪態をつく、いつも不機嫌な50男。もはや世間
から必要とされず家族もいない、己のダメさが分かっているのにどう
しようもない、だが新たな一歩を踏み出す気概もない主人公の閉塞感
がリアルに再現される。荒れ果ていた心が、人と人は支えあって生き
ていくものだと学び、次第に優しさを取り戻していく過程が胸に沁み
る。

失業中の飲んだくれ・ジョセフは、バーで喧嘩してチャリティーショ
ップに逃げ込んだのがきっかけで、店主のハンナと言葉を交わすよう
になる。裕福な地区に暮らすハンナは、夫のDVに苦しんでいた。

ハンナに苛むような辛言を浴びせていたジョセフは、彼女の事情を知
るにつれ興味を引かれる。ハンナもまた気遣ってくれるジョセフに胸
襟を開いていく。不器用な者同士が、お互いの気持ちを少しずつだが
通わせていく描写が感情的にならずに淡々としていて、そのさりげな
さが、まだふたりの日常の裏には何か大きな「他人に言えない秘密」
があるのではと予感させる。

やがて愛犬を蹴殺すほど荒んでいたジョセフから険が取れていくのと
は逆に、ハンナの顔にはアザと陰りが増えていく。沈んだトーンの映
像は、彼らのふとした仕種や表情から目が離せないほどの緊張感を生
んでいた。

お勧め度=★★★★(★★★★★が最高)

「思秋期」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120908

を参考にしてください。

本日はもう1本

「希望の国」 です。

逃げる若い世代と、住み慣れた土地にしがみつく老夫婦。抗いがたい
巨大なうねりに巻き込まれ、生き残ろうとする者と運命を受け入れよ
うとする者の間に太い"杭"が打ち込まれる。それは親と子だけでは
なく、過去と現在、生と死をも隔てる境界線。物語は目には見えない
恐怖が徐々に拡散し、人間の日常を蝕んでいく様子を描く。避難先で
防護服を身に包む妊婦が町の人々から白眼視されるシーンは、人の心
に潜む偏見が生む反応こそが恐ろしいのではと思わせる。

地震による原発事故で住民に退避命令が出る。酪農を営む小野家はぎ
りぎり立ち入り禁止地区を免れるが、小野は長男夫婦の洋一・いずみ
を避難させる。2人は見知らぬ街で新生活を始め、いずみは妊娠する。

突然警察と自衛隊がやってきて、小野家の庭先に原発20キロ圏のバリ
ケードを作る。小野の家は圏外だが向いの宅地住民は国家権力による
問答無用の強制退去。さらに避難地域が広がるが、周囲から誰もいな
くなっても小野は普段通りの暮らしを続ける。認知症を患う妻と手塩
にかけて育てた乳牛への思いというより、国に対する強烈な不信感が
小野をより頑迷にしている。

やがて小野のもとに家畜殺処分や強制退避の通知が来るが、それらは
「命令書」と居丈高だ。国策だったはずなのに、事故が起きると家畜
を殺して出ていけと被災者に「命令」する。国の仕打ちに怒り、あく
まで抵抗する小野はすべての原発被災者の気持ちを代弁していた。

お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

「希望の国」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120821

を参考にしてください。

本日はもう1本

「エクスペンダブルズ2」 です。

銃弾の雨が降り爆弾の嵐が通過しても男たちは無傷。自分たちの任務
に一切の疑問もためらいも持たずひたすら悪党どもをぶち殺していく
戦争大活劇は、ふた昔前のB級映画の雰囲気をふんだんに味あわせてく
れる。いまだ一線で気を吐く現役のスターたちと久しぶりに顔を見る
過去のスターたちの競演、シニアのマッチョ祭りと化した映像からは、
"見世物"という映画の原点に戻ったような懐かしさすら覚える。

アルバニア奥地に墜落した輸送機から機密ケースの回収を依頼された
バーニーたちエクスペンタブルズは、ヴィラン率いる傭兵軍団にケー
スを横取りされた上に新人狙撃手を殺され、復讐を誓う。

髑髏の装飾を施したナイフやペン、バックルなどバーニーの趣味の悪
さは、そのままこの作品のテーマとなって、"力こそすべて"の掟を
象徴する。紅一点この作戦に加わったマギーも暗号解除や東欧言語に
精通しているほかに銃器や拷問具の扱いにも秀でており、キュートな
外見とは反対に戦場で生き残る知恵とタフネスを証明してバーニーた
ちに仲間と認められていく。その過程が異彩を放っていた。

チャック・ノリスが唐突に助っ人に現れたり、前作では顔見世程度だ
ったシュワちゃんやブルース・ウィリスが今回はマシンガンを手に大
暴れし、お互いの代表作の決め台詞を交換し合うなどの細かい芸を見
せるなど、大いに楽しませてくれる。なにより60過歳ぎたおっさんた
ちが体を張ってエンタテインメントに徹する姿勢に好感が持てた。

お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

「エクスペンダブルズ2」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120911

を参考にしてください。

本日はもう1本

「菖蒲」 です。

映画という虚構も、日常という現実も、女優にとってそのふたつの人
生は"死"という共通項で密接に結びついている。自分にレンズを向
けてきた長年寄り添った者の死、新作映画の中での愛する者たちの死。
物語は円熟の境地に達した大女優が、夫の死に直面した時に去来した
思いを語るとともに、自らの主演映画で重篤な病に侵されながらも新
しい恋に胸をときめかせる役を演じる姿を描く。カメラはさらに彼女
の二態を記録する第三の視点となり、作品は複雑な三層構造をなす。

ベテラン女優・クリスティナは夫の死から立ち直れず、新作へのオフ
ァーを一度は断るが後に承諾する。撮影に入った映画「菖蒲」は、大
戦後のポーランドが舞台の人間の生と死を見つめるストーリーだった。

「菖蒲」の劇中でクリスティナ扮するマルタは、医師の夫から先は長
くないと診断されるが本人はそれを知らされない。ある日、マルタは
ダンス場で見つけた若者・ボグシに惹かれ、恋心を抱いていく。息子
ほどの年齢のボグシから川に誘われるといそいそと水着に着替えて出
かけるマルタ。そんな彼女が、橋の上を歩くボグシと若い女を見かけ
て我に返る場面が、年齢を重ねることの哀しさをリアルに再現する。

クリスティナにとって、もはや老いと死は遠い未来の話ではなく、身
近に迫った問題となっているのだろう。彼女の切実さは、ひいては老
境に達したアンジェイ・ワイダ監督の死を受け入れるための準備にも
思えてくるのだ。

お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

「菖蒲」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120928

を参考にしてください。

2012年10月19日金曜日

渡辺麻友、約600人の前で「ねらわれた学園」主題歌を初披露


[映画.com ニュース] 人気アイドルグループ「AKB48」の渡辺麻友が10月19日、東京・有楽町の丸の内ピカデリーで行われたアニメ映画「ねらわれた学園」のプレミア試写会に、声優の本城雄太郎、中村亮介監督とともに出席。


桜吹雪が舞うなか、会場に集まった約600人のファンを前に、主題歌「サヨナラの橋」を初披露した。

【フォトギャラリー】渡辺麻友が登壇した試写会の模様

薬師丸ひろ子主演、大林宣彦監督による実写版「ねらわれた学園(1981)」をはじめ、6回にわたり映像化されてきた眉村卓氏のSFジュブナイル小説を、中村監督が初アニメ化した今作。

謎の転校生の存在によって、日常が揺らいでいく少年少女の姿を描く。

渡辺は主題歌のほか、ヒロインの涼浦ナツキ役で映画声優に初挑戦。

「声だけで演技をしなくちゃいけない。

声だけでどう感情を伝えるかが大変だった」と振り返り、「アニメは好きで見ていますが、キャラクターに声を吹き込む側として出演できるのはうれしかった。

不安もいっぱいあったけれど、みなさんに助けられた」と感謝を述べた。

渡辺と本城は、完成した作品を鑑賞し「映像がきれいでどの場面も美しくて、心が洗われるよう。

忘れていた何かを思い出させてくれるようなメッセージが込められています」(渡辺)、「絵と同じくらい音楽も素敵。

僕は男子校なので、やっぱり青春っていいなと思った(笑)」(本城)とアピールした。

「ねらわれた学園」は、11月10日から全国で公開。



2012年10月18日木曜日

<彼女がキレイな理由>平山あやさん ファッション好きで衣装に「私物を提案」


女優の平山あやさんが主演するケータイドラマ「私が黄金を追う理由~映画『黄金を抱いて翔べ』スペシャルドラマ~」が携帯電話専用放送局「BeeTV」とドコモのスマートフォン向け動画配信サービス「dマーケット VIDEOストア powered by BeeTV」で配信されている。


ファッションが好きで、役の衣装にアイデアを出し、私物も身につけているという平山さんに休みの過ごし方などを聞いた。

(毎日新聞デジタル)

休みの日は、買い物やドライブ、マッサージ、ネイルサロン、ジム、友だちとの食事など、一日中、「なにか行動しているタイプ」と話す平山さん。

「時間がもったいないから早起きして、できる限りのことを1日でやります。

いろいろやりたいことをやらなきゃって、寝るまでに目いっぱい時間を使う」と精力的に動き、休日を満喫している。

予定は事前に決めず、「朝起きてそのときにやりたいことを決めていく」と直感型。

「好きなことをやっている方がリフレッシュできて、楽しい。

家でのんびりしたりするよりも、行動している方がリラックスできています」と話す。

「学生時代は朝から友だちと会っていろんなところに行ったりしていたけど、大人になってから1人の時間も好きになった」といい、食事以外は1人で出かけることが多い。

中でも「いろんなところを出歩いて洋服屋さんをのぞいたりするのがすごく好き」と明かす。

昔からファッションに興味があり、流行のものよりも自分の好みを重視して、気に入ったスタイルは色違いも購入するほど。

「(同じデザインでも)色によってファッションが変わるから」と話し、私服は毎日、帽子やパンツ、Tシャツなど、その日着たいアイテムを一つ決めて、それに合わせて2分ほどでコーディネートしていくという。


そんな平山さんは、撮影中も日ごろから衣装についてアイデアを出しているといい、今回の「私が黄金を追う理由」で演じた小説家志望の編集者ルカのファッションにも、自身のアイデアが取り入れられた。


「Tシャツはゆったりした薄めの素材のものをさらっと着て、デニムのシャツを羽織っていたりして元気な感じに見せたかった」とポイントを説明、アクセサリーは「華奢(きゃしゃ)な一粒ダイヤのネックレスをしていたり、時計も大ぶりすぎず、さりげないものがいいんじゃないかということで、私物をいくつか提案しました」と明かした。


平山さんが目指す美しさとは? 「特に決めずに、自分なりに自分を成長させていくこと」ときっぱり。

「目標を立てずに、好きなことをやったり、オフの時間を作って楽しんだり、ハッピーな時間を過ごすと、体の中からいいものが出たりして、絶対に(美しさに)影響してくると思う」といい、「楽しんで生活することが一番の目標です」と笑顔で語った。


◇プロフィル

ひらやま・あや。

84年1月13日生まれ。

栃木県出身。

98年の「第23回ホリプロタレントスカウトキャラバン」でグランプリを獲得し、芸能界デビュー。

99年にドラマ「可愛いだけじゃダメかしら?」(テレビ朝日系)で女優デビューした。

その後、01年の映画「ウォーターボーイズ」(矢口史靖監督)などに出演し、ドラマ、映画のほか、バラエティー番組やCMなど幅広く活躍。

11年9月には自身がデザインを手がけるサロペットブランド「HAPPY KIRAKIRA」をスタートさせた。

瀧本美織さん主演の連続ドラマ「パーフェクト・ブルー」(TBS系、月曜午後8時)に出演中。

「私が黄金を追う理由」は、11月3日公開の映画「黄金を抱いて翔べ」のスピンオフ作品。

映画で金塊強奪を企てる男たちを演じる妻夫木聡さん、浅野忠信さんらが映画と同じ役柄で出演している。



こんな映画は見ちゃいけない!(10/18)

本日、とりあげる作品は

「キック・オーバー」 です。

屋台やレストランだけでなく、ヘロイン注射サロンや銃の売買、売春
まで行われている場末の盛り場のごとき混沌。しかし、それはメキシ
コにある正式な刑務所、驚いたことに一般の住民も施設内で寝起きし、
面会日には妻や恋人とセックスするための簡易貸しテント屋が繁盛し
ている。映画は、そんな無法地帯に放り込まれたアメリカ人が、度胸
とアイデアと行動力でギャングを手玉に取り奪ったカネの決着をつけ
る姿を追う。名前も経歴もすべて不明の主人公が恐るべき牙をむく瞬
間が痛快だ。

フランクのカネを強奪したドライバーはメキシコの刑務所に収監され
る。そこはボスのハビが支配する地獄のような場所、ドライバーは英
語を話す少年と知り合い、彼がハビに肝臓を取られる運命だと知る。

少年を救う過程で描かれるのは、メキシコでは人命の値段も安く、値
打ちのない者や目障りな者、しくじった者はあっさりと殺されていく
暴力と無情の掟。そんな世界でサバイバルする男という、メル・ギブ
ソンの原点に戻った設定に胸が躍る。

ドライバーが何者なのか一切の情報はないが、銃器の扱い精通し、ハ
ビやフランクとの交渉時に見せる機転、さらに鮮やかな偽装工作を見
せるなど、高度な訓練を受けていた人間兵器だった過去がうかがえる。
ただ、謎の多さが逆にドライバーに対する距離を産んでしまい、彼の
感情に入り込めないあたりに物足りなさを覚えた。

お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

「キック・オーバー」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120807

を参考にしてください。

本日はもう1本

「大恐竜時代」 です。

巨大な頭部と発達したアゴ、筋肉が隆起した後足、太く長い尾。最強
の肉食恐竜・ティラノサウルスの赤みがかった風貌は、凶暴で狡猾、
だが、常に単独で行動するその孤高は美しさすら纏う。一方、家族で
狩りをするタルボサウルスはチームワークが命。親子が役割を分担し
て獲物を追いこんで仕留める。物語はこのファミリーがティラノサウ
ルスに殺され、唯一助かった小さな息子の成長を通じ、弱肉強食の自
然界の掟の中で生き残るためには家族の団結が必要であると訴える。

母と兄、姉2頭と暮らすタルボサウルスの子供・パッチは好奇心が旺盛
だが、まだ狩りには参加させてもらえない。ある日、縄張りをめぐっ
てティラノサウルスのレックスと衝突、バッチは家族を殺される。

他の恐竜の卵を盗で飢えをしのいでいたパッチは、見よう見まねで生
き抜くすべを体得していく。その後メスと出会い、協力して狩りをす
る方法を学ぶうち2頭はつがいメスは卵を産む。パッチは親となり守る
べき家族が出来ていっそうたくましくなっていくが、まだまだレック
スには敵わない。

子育てを通じての生存技術の伝承、集団での頭脳的な狩り、強烈な縄
張り意識と執拗な執念など、この映画で描かれる白亜紀の恐竜たちは
現代の爬虫類と比べて非常に知能が高いが、恐竜学者による考証はき
ちんと受けているらしい。でも、そんな理屈など抜きに、恐竜たちが
暴れまわる姿にわくわくし、遠い過去に想像力をいざなってくれる。

お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

「大恐竜時代」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120920

を参考にしてください。

本日はもう1本

「劇場版 私立バカレア高校」 です。

誰が強いかどちらが勝つか、不良たちはひたすら喧嘩に明け暮れる。
上品で穏やかな言葉の陰にトゲを潜ませたお嬢様たちは美しさと知略
を競い合う。自分が一番でいたい、少年も少女もその思いを前面に押
し出して学園生活を送ろうとする。映画は、水と油のような男子高と
女子高が合併し、さらに期限付きで他校に居候する限りなくばかげた
設定のなかで、彼らが己の目標やプライドよりも大切なものを見つけ
ていく姿を描く。

第一カトレア学院に転校したバカレア高校の生徒たち。達也ら男子は
雰囲気に馴染めず、文恵ら女子は結花を中心とした第一のグループと
対立する。やがて学園祭が始まるが、不良男子は結花に隔離される。

不良男子を、異臭を放つケダモノととらえている結花が思わぬところ
で彼らの存在価値を知り、女にはない長所を見出す場面がキュートだ。
普段はバカ丸出しなのにいざという時には頼りになる、そんな男子の
魅力に目覚め誤った先入観をあらためていくプロセスは、ミエミエの
仕掛けにもかかわらず無償の善意を感じさせた。

そもそもこのコラボ企画は、ジャニーズとAKBの掛け算になってこそそ
の化学反応が楽しめるはず。ところがお互いの領分から出ることなく、
ハンカチと手紙のやり取り以外はジャニーズもAKBも自己完結してしま
っているのは残念。やはり、最後はミュージカル仕立てにしてジャニ
ーズ対AKBのダンス対決に持っていくくらいのサービス精神は必要だ。

お勧め度=★★(★★★★★が最高)

「劇場版 私立バカレア高校」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20121015

を参考にしてください。

本日はもう1本

「4:44 地球最期の日」 です。

あと十数時間で地球は滅亡する。運命から逃れる術はなく、人類はた
だその時を待つばかり。もはやすべきことはすべてした、いまさらジ
タバタしても未来は変えられない、絶望に打ちひしがれていては今ま
での自分を否定する結果になる。ゆえにほとんどの市民は普段通りの
日常を送りつつタイムリミットを迎えようとする。セックスと痴話げ
んか、友人との他愛ない会話、映画はそんな大した出来事が起こらな
い"地球最期の日"を描き、数多ある"終末映画"とは一線を画す。
だが、そこに高邁な理想や愛といった人間ならではの感情はない。

オゾン層崩壊が翌日の未明に迫ったある日、NYのアパートに住むシス
コとスカイは、愛し合い、絵画を完成させ、親しい友人や家族に別れ
を告げる。TVでは予言を的中させたアル・ゴアが思いを口にする。

米国では固定電話の代わりにスカイプを使うのが一般的になっている
のだろう、すぐには会えない人とも顔を合わせて会話ができる便利さ
が人の絆を強くするとあらためて認識した。しかし、大した用事でも
ないのに顔を見て話すのはストレスがたまるような気がするが。。。

やがてオゾン層に変化が現れ始め、NYの空にもオーロラが輝きだす。
その美しさの中でシスコとスカイは息絶えていくのかと期待したが、
ぬる〜い映像が続くだけ。どうせなら物語の舞台をアパートの室内に
限定して、シスコとスカイのセリフのみで成り立つ二人芝居といった
実験的な手法を用いるくらいの冒険をしてほしかった。

お勧め度=★*(★★★★★が最高)

「4:44 地球最期の日」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20121017

を参考にしてください。

2012年10月13日土曜日

こんな映画は見ちゃいけない!(10/13)

本日、とりあげる作品は

「桃さんのしあわせ」 です。

生まれたときから育ててくれた。中年を過ぎた今も家事を任せている。
実の母よりずっと身近なのに、特に意識はしなかった。ただ、当たり
前のようにそばにいて、身の回りの世話をしてくれる。映画は、男と、
彼の一家に長年仕えてきた家政婦の関係を中心に、現代中国における
高齢者社会の実態を描く。家政婦が動けなくなって初めて、彼は彼女
がなくてはならない存在と気づき、身寄りのない彼女のために老人ホ
ームを見つけ、頻繁に見舞う。ふたりの交流はまるで血縁以上の親密
さ、よき老後を迎えるには人との絆がいかに大切かを思い知らされる。

香港の映画プロデューサー・ロジャーが北京出張から戻ると家政婦の
桃(タオ)さんが脳卒中で倒れていた。病院に運ぶが中風の後遺症が
残ると診断され、ロジャーは桃さんを老人ホームに入居させる。

13歳の時から60年間ロジャーの家族に仕えてきたという桃さんは、他
人の面倒を見るのは習性になっていても誰かに介護されるのには慣れ
ておらず、ヘルパーやロジャーが手を貸してくることに居心地の悪さ
を覚えている。なによりいつも背筋をピンと伸ばして生きてきたのに
体が命令を聞かないふがいなさに耐えられない。

そんな桃さんは家政婦の人生に誇りを持ち、一方で分をわきまえても
いる。ロジャーの母からの差し入れの品は受け取ってもカネは固辞す
るあたり、使用人としての美学すら感じさせる。彼女の一本筋を通す
生き方は、古き良き中国人の道徳観に根差しているに違いない。

お勧め度=★★★*(★★★★★が最高)

「桃さんのしあわせ」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120707

を参考にしてください。

本日はもう1本

「情熱のピアニズム」 です。

身長1メートルほどしかない肉体から迸るエネルギーは聴衆を圧倒し、
感動させ、陶酔を与える。指先が紡ぎだす旋律は時に繊細で時に情熱
的、それは身体の自由をほぼ奪われた男の魂の自由を叫ぶ声だ。映画
は先天的骨形成不全症と闘いながらも、稀代の天才ジャズピアニスト
として一時代を築いたミシェル・ペトルチアーニの生涯を、関係者の
インタビューと生前の映像で再構成する。障害を活力にし、異形を魅
力にすり替え、過酷な運命ですらアートに昇華してしまう。彼のポジ
ティブな生き方はあくまで奔放で刺激的だ。

骨が弱いミシェルは両親や産科医から絶望的と思われたが、やがて音
楽に興味を持ち始める。父の英才教育でジャズピアノの腕を上げ13歳
でプロデュー、有名なジャズプレイヤーとセッションを重ねていく。

18歳でフランスから米国西海岸に渡ったミシェルは本場のアーティス
トたちと交流を重ね、彼の演奏が超一流であると証明していく。ピア
ノの高音部を高速で叩き続ける姿は、こんな体を与えた神に対する抗
議の悲鳴にも聞こえ、彼の超絶技巧は誰にも真似ができない。一方で、
あまりの激しさに度々腕や指を骨折する。まさに身を削りながらのパ
フォーマンスは、己の命が長くないことを悟っていたから。

だからこそ女にも手が早く、結婚離婚を繰り返しあちこちに恋人を作
っては別れる。人生を完全燃焼したい、悩んでる暇はない、そんな彼
の楽天的で積極的な姿勢がより多くのファンの心を引きつけるのだ。

お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

「情熱のピアニズム」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120906

を参考にしてください。

本日はもう1本

「SAFE/セイフ」 です。

地下鉄でも街中でもホテルでもレストランでもカジノでも、ところ構
わず銃をぶっ放す。もちろん倒されるのは悪党ばかりだが、周囲の迷
惑をかえりみずに暴走する主人公とギャングたちに屈折した爽快感を
覚えてしまった。駆け引きと騙し合い、複雑に絡み合う利害、誰もが
他者を出し抜こうとし、失敗した者には死あるのみ。そんな状況で孤
立無援の男と哀しい運命を背負った少女が信頼関係を結んでいく。導
入部で、やられっぱなしの上絶望の表情を見せたりもするあたり、こ
れまでのジェイソン・ステイサムの作品とはひと味違っている。

ロシアマフィアに借りを作ったルークは、地下鉄ホームでロシア人に
追われる少女・メイを救う。マンハッタンに出るとNYPDの刑事が介入、
高級ホテルに隠れるが、中国マフィアがメイをさらっていく。

メイは中国マフィアのカネの流れをすべて記憶する"生きる裏帳簿"。
彼女の頭の中にある金庫のナンバーを聞き出そうとロシアマフィアが
誘拐し、汚職刑事グループもマフィアとの取引材料にするためにメイ
をつけ狙う。メイはもはや世間知の低い子供ではなく、決してルーク
の足手まといになっていないところが物語の展開を早め、アクション
の波状攻撃は考える暇を与えない。

ただ、ステイサムが得意とする格闘シーンはハンディカメラの手ブレ
した短いカットの連続で、卓越した技の切れ味をじっくりと堪能でき
なかったのが残念。このままセガール化しなければよいが。。。

お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

「SAFE/セイフ」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120705

を参考にしてください。

本日はもう1本

「推理作家ポー 最期の5日間」 です。

落ちぶれても矜持だけは無駄に強く、我こそは当代随一の文学者であ
るという自信は揺るぎない。一方で婚約者の威厳ある父親の前では威
勢を削がれたりもする。男はペンから生み出された奇想天外な仕掛け
で一世を風靡した作家、死の影におびえる日々の中、連続殺人犯のか
ら挑戦を受ける。映画は稀代の推理小説家、エドガー=アラン・ポー
が警察とともに犯人を追跡する過程で、悩み苦しみ恐れ怒る感情豊か
なポーの姿を描いていく。そのスタイリッシュな映像は夜の闇をより
深く切り裂き、猟奇的な死体ですらアートに昇華する。

母娘惨殺事件、批評家斬殺事件が連続して起き、捜査官・フィールズ
警視正は手口がポーの小説と同じだと気づく。フィールズはポーに協
力を要請するが、今度は仮面舞踏会で何かが起きると予告状が届く。

犯人はさらにポーの婚約者エメリーをさらい、ポーに対してこれらの
殺人事件をモデルにした連載小説を書けばエメリーの居場所を教える
内容のメッセージを送りつける。犯人は暴力的で残酷ではあるが、同
時にポーの著作の熱狂的なファンでもある。それは顔の見えない「ミ
ザリー」を連想させ、死体に隠されたエメリーの監禁場所のヒントか
らは、知的だが狂気に駆られた孤独な犯人像が浮かび上がってくる。

犯人の動機が説得力に欠けるのは知能が高いのに精神に異常をきたし
ているからなのか。謎に包まれたポーの最期の5日間と「レイノルズ」
の"遺言"に着想を得たこの作品はあくまで重厚でミステリアスだ。

お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

「推理作家ポー 最期の5日間」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120823

を参考にしてください。

2012年10月11日木曜日

こんな映画は見ちゃいけない!(10/11)

本日、とりあげる作品は

「マヤ ─ 天の心、地の心 ─」 です。

緑に覆われていた大地は赤茶けた土がむき出しになり、密林だった山
は雑草しか生えていない。井戸は涸れ、清流は汚され主食の穀物です
ら奪われていく。かつて天文学を発達させ正確な暦を作るために壮大
なピラミッドを建造した中米のマヤ文明、スペイン人らの侵略によっ
て簒奪された民族のわずかな生き残りは山中で細々と暮らしていたの
に、今またグローバリゼーションの波に住処を追われようとしている。
映画は文明社会と距離を置き、自然と神と精霊と祈りの中で静かに生
きるマヤ族の人々の現在をレポートする。

トウモロコシの原産地であるメキシコ高原地帯に住むマヤ族は遺伝子
組み換えトウモロコシの脅威にさらされている。グァテマラの高地で
は金鉱山の開発が進み、現地のマヤ族は環境汚染に苦しんでいた。

黒、白、茶、赤など、黄色い粒がそろったものしか流通していな日本
とは違い、多様な色の粒が美しい宝石のような輝きを放つマヤのトウ
モロコシ。マヤ神話にある"神がトウモロコシを人にした"という一
説にある通り、彼らにとっては聖なる作物なのだ。それを多国籍企業
は単なる金もうけの手段として遺伝子レベルで改良する。金鉱山では
シアン化合物が住民の健康を蝕んでいても、国も企業側も知らぬふり。

そんな現実を、映画は決して扇情的にならず、マヤの人々に淡々と現
状を訴えさせることで、先進国の豊かさの代わりに何が犠牲になって
いるのかを考えさせる。

お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

「マヤ ─ 天の心、地の心 ─」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120921

を参考にしてください。

本日はもう1本

「新しい靴を買わなくちゃ 」 です。

おばさんになっても、結婚・離婚・出産歴があっても、女として現役
でいたい。物語はそんな中年女性の願望、というか妄想を臆面もなく
爆発させる。アートのようなしっとりとした質感で再現されたパリの
街並み、イケメンの好青年との偶然の出会い、そして忘れかけていた
胸の高鳴りに己の欲望を再認識していく過程は、まさに大人のおとぎ
話。たまゆらの恋と分かっているからこそ素直になれる、ここまでス
トレートに"男が欲しい"気持ちをさらけ出すヒロインにはむしろ清
々しさすら覚えた。

パリで迷子になったカメラマンのセンは、フリーペーパーの記者・ア
オイと知り合う。食事を共にし、バーに行くとアオイは酔いつぶれ、
アパートに送ったセンはそのままアオイの部屋の浴槽で夜を明かす。

もはや手垢が付いたような展開だが、2人の間で交わされる会話のテン
ポが良くて決して飽きさせない。また、アオイの心理を投影するよう
な絶妙のカメラワークは、時にブレ、ピントが外れ、ためらいやとき
めき、寂しさや不安、喜びとため息といった繊細な感情を代弁する。

一方で、映画はセンの妹・スズメに試練を与え、女の魅力を身に着け
るにはたくさんの涙を流す必要があると訴える。恋を成就させるため
には人生の経験が最大の武器、アオイとスズメの対比は、恋愛の土俵
においてすでに終わっているとされてきたアラフォー女性から20代の
"現役"女性への挑戦状なのだ。。。

お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

「新しい靴を買わなくちゃ 」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20121008

を参考にしてください。

本日はもう1本

「ツナグ」 です。

伝えられなかった思い、知っておきたかった答え。死んでしまった者
たちとの間に横たわる溝は、生きている者を苦しめる。だが、一度に
限りわだかまりを解くチャンスを与えられたら、どんな言葉を用意す
るべきか。物語は死者を甦らせる能力者になるべく修業する青年が、
他人の人生に干渉せざるを得ない苦悩を描く。誤解が解けて幸せにな
る人もいる、更なる悩みを背負い込む人もいる、また願いが叶う人も
いる。彼らを見つめながらも、自身は両親の死に深く傷ついている。
優しさのみでは決して幸せになれない、しかし真実を知ることで人間
は解放される、それらを体験して成長いていく主人公がいとおしい。

死者仲介人「ツナグ」の後継者見習いの歩美は、亡母に権利書のあり
かを聞きたい男の依頼を受ける。その後、親友が事故死した同級生、
失踪した婚約者を忘れられない男などに面会をセッティングする。

演劇部の女高生・嵐と御園のエピソードが、彼女たちの複雑な心理を
象徴していた。御園と二人になった嵐は謝るだけで何をしたかは言え
ない、一方で御園の寛容は嵐を責め続ける。女同士の友情と憎しみが
入り混じった不可解な感情がミステリアスだった。

ただ、行方不明になったキラリを待ち続ける土屋のパートは出会いか
らしてバカげている。救急搬送に付き添ったならキラリの身分証明書
くらい確認するはずだろう。リアリティを持たせるためのディテール
があまりにも杜撰すぎ、開いた口がふさがらなかった。。。

お勧め度=★★(★★★★★が最高)

「ツナグ」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20121009

を参考にしてください。

2012年10月6日土曜日

こんな映画は見ちゃいけない!(10/6)

本日、とりあげる作品は

「アウトレイジ ビヨンド」 です。

陰謀、裏切り、粛清……。誰もが腹に一物を抱え、わずかな油断で足
元をすくわれる。利害が一致しているうちは"兄弟"でも、立場が危
うくなるとすぐに切り捨てられるヤクザの世界。まさに寝首を掻くか
掻かれるかの緊張感の中で男たちは日々命がけで鎬を削っている。そ
してヤクザ同士の合従連衡を陰で操り勢力を殺ごうとする刑事。映画
は「義理と人情」といった任侠道とは対極にある現代ヤクザのドロド
ロとした人間関係を無数の銃弾と血で再現する。逃げ場を失った男た
ちが虚勢の皮をはがされたときの見苦しさが、本当は肝っ玉の小さい
彼らの本性をさらけ出していた。

関東最大の組織・山王会の会長に収まった加藤は知性派の石原を若頭
に抜擢、組の古参幹部は不満を募らせていた。ある日、幹部の一人が
現状を打破すべく刑事の片岡の手引きで大阪の花菱会に助力を求める。

それぞれの思惑が交錯し、もはや先に殺さなければ自分がやられる状
況の中、男たちは抜き差しならない立場に追い込まれていく。その中
で、前作ではショボいヤクザに過ぎなかった木村が驚異的な胆力を身
に付け親分連中を相手に渡り合うが、彼を演じた中野英雄の鬼気迫る
表情が印象的だった。

結局、組織に頼らなければ生き残れない、組織に頼り過ぎても使い捨
てにされる。確固たるバックグラウンドを持つ者でさえ命の保証はな
い。その救いのなさがヤクザ社会の男たちの運命を象徴していた。

お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

「アウトレイジ ビヨンド」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20121001

を参考にしてください。

本日はもう1本

「最終目的地」 です。

いつまでも講師ままでいられないのは分かっている、行動する勇気が
なかっただけ。いつまでも哀しみに浸っていてはいけないのは分かっ
ている、抜け出すきっかけがなかっただけ。そんな停滞した日々を送
っていた人々が出会ったっ時、彼らの時間が動き始める。物語は米国
の大学院生が、ウルグアイのある家族を訪ねたことから起きる、心の
変化を描く。ケータイもパソコンもない環境で、主人公が濃密な人間
関係を結んでいく過程は一種のカルチャーショックを覚える。

文学助教のオマールは、自殺した作家・ユルスの伝記執筆の公認を遺
族に断られるが、恋人のディアドラの勧めで直接依頼に行く。ユルス
の愛人・アーデンに歓迎されるが妻のキャロラインは公認に反対する。

ユルスの妻と愛人、その娘、兄とゲイ恋人の5人が暮らす奇妙な家族に
は、いまだにユルスが中心にいるよう。オマールは彼らのとって久し
ぶりの闖入者、家族はユルスの断片的な情報しかオマールに話さない
が、それでも徐々に公認しようという気になっていく。彼らはユルス
への思いをオマールに託して、ユルスの呪縛から解放されようとして
いるのかもしれない。

ゆっくりと流れる日常、何度も反芻しなければ真意を見抜けない複雑
な言葉と態度、望まぬ者との同居、忘れ得ぬ記憶、宗教上のタブー。
それらが混然としながらも同時に存在し、愛と憎しみと後悔と希望と
いった感情が交差する世界が端正な映像にまとめ上げられていた。

お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

「最終目的地」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20121002

を参考にしてください。

本日はもう1本

「ロラックスおじさんの秘密の種」 です。

道路や建物だけでなく木や花まで人工物でできた町、住人はそれが清
潔で快適な暮らしと信じていて、悪辣な企業家から新鮮な空気を買わ
なければならないことに疑問すら抱いていない。強権国家を連想させ
るような、情報を操作され現状に満足させられ人々と、富と権力を独
占する独裁者。映画はそんな町に木の種に象徴される希望を持ち帰ろ
うとする少年の姿を通じ、行動を起こさなければ何事も始まらないと
訴える。彼が操る一輪バイクの走りがダイナミックかつスリリングで
めまぐるしいアクションと時にミュージカル仕立ての構成が、自然環
境を保護するのは結局人間の生活を守ることだというもう一つのテー
マから説教臭さを消している。

植物がない町に住むテッドは本物の木が欲しいと言う女の子のために、
町はずれで隠棲するワンスリーを訪ねる。テッドはワンスリーに昔話
を聞かされるうちに、木を植え育てる使命に目覚めていく。

ワンスリーはかつて成功を夢見る企業家だったが、森の木の葉から作
った織物が大ヒット商品となり、工場を増設し大金持ちになっていく。
その過程で森の木の精・ロラックスと「木を伐らない」と約束してい
たが、強欲に負けてしまう。

切り株だらけの森、枯れ果てた草花、肩を落として去っていく動物た
ち。それは現在進行形で地球上のどこかで起きている悲劇、命を奪わ
れた草木と住処を追われた動物たちの悲哀が再現されていた。

お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

「ロラックスおじさんの秘密の種」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20121003

を参考にしてください。

2012年10月5日金曜日

ジョニー・デップ主演『ローン・レンジャー』の海外予告編公開!


ジョニー・デップが主演する映画『ザ・ローン・レンジャー(原題) / The Lone Ranger』の海外予告編が公開された。
西部劇らしい機関車上でのバトルや銃撃戦などが、ロック音楽に乗せて繰り広げられるスタイリッシュな仕上がりで、頭に鳥の飾りをつけたジョニーの姿もしっかりと確認できる。


映画『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』写真ギャラリー

『ザ・ローン・レンジャー』はネイティブアメリカンのトントと白人のローン・レンジャーとの友情と冒険を描く作品。
トントには自身もアメリカ先住民の血を引くというジョニーが、ローン・レンジャーには『ソーシャル・ネットワーク』のアーミー・ハマーがふんする。


今回公開された予告編では、黒いマスクを着けたローン・レンジャーと白塗りで頭には鳥の飾りをつけたトントのほか、『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』のヘレナ・ボナム=カーターがクラシックな服装で登場。
『マトリックス』っぽいスローモーションのアクションシーンなどもあり、予算オーバーで製作中止の危機にひんしたことがあることも納得の大作になっているようだ。


メガホンを取るのは『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズでもジョニーとタッグを組んだゴア・ヴァービンスキー監督。
全米公開は来年7月3日を予定している。
(編集部・市川遥)

2012年10月4日木曜日

こんな映画は見ちゃいけない!(10/4)

本日、とりあげる作品は

「エージェント・マロリー」 です。

屈強な男たちに殴られ蹴られ羽交い絞めにされ馬乗りになってまたボ
コボコに殴られても、決して怯まない。不利な体勢から手足を絡ませ
関節をきめ、ひじ打ちをかまして延髄切りで反撃する女。映画は、ア
ザだらけ傷だらけになりながらも、あくまで素手でのファイトを貫く
ヒロインの圧倒的なテクニックとタフネスを再現する。鍛え上げられ
た頑丈な肉体と洗練された技の数々はプロ格闘家がもつ本物の迫力、
しなやかで無駄のない体の使い方が鍛錬にかけた年月の長さを物語る。

元同僚のアーロンにいきなり襲われた民間のスパイ・マロリーは、逆
に彼を撃退し、居合わせた青年のクルマで逃走する。道中、マロリー
は青年に、バルセロナとダブリンでのミッションを話して聞かせる。

バルセロナでの指令を全うしたマロリーは、上司で元恋人のケネスに
すぐダブリンに行けと命じられる。そこでパートナー役の殺し屋に不
意を突かれる。仕組まれた罠、裏切りと欺瞞、誰を信用すべきで、何
を疑うべきか。マロリーは生存本能をフル稼働して、敵意に満ちた街
を駆け抜け屋根を伝い外壁を飛び降り追ってくる武装警官を一人ずつ
排除していく。銃器弾薬に頼らずカタをつけようとするマロリーのス
タイルは非常に小気味よい。

ただ、無名の新人女優が並み居るハリウッドスターをぶちのめしてい
くところが見どころなのは理解できるが、せめて使い捨てにされる殺
し屋の悲哀が描かれていればマロリーに共感できたのだが。

お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

「エージェント・マロリー」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20121001

を参考にしてください。

本日はもう1本

「ハンガーゲーム」 です。

守るべきは自分の命なのか人間としての尊厳なのかを自問し続ける。
物語は「バトル・ロワイヤル」をハリウッド流にスケールアップさせ、
運命に立ち向かう中で次第に自らの使命に目覚めていくヒロインの成
長を描く。未来都市の造形と都市の人々のファッションが目を見張る
一方、プレイヤーたちが使う戦略や戦術がアイデアにあふれ、経験値
が増すうちに強くなっていく姿がゲーム感覚で楽しめる。

年に一度開かれるハンガー・ゲーム参加者に選ばれた妹にかわって志
願したカットニスは、同地区のピーターともにトレーニング施設に送
られる。研修の後、24人のプレイヤーは深い森の闘技場に放たれる。

支配層が住む都市部と隷属地区の格差、さらに隷属地区の住民は支配
層のために命がけの娯楽を提供させられている。もはや支配される側
は希望も持てず、圧倒的な支配層の権力の前で抵抗する気力すらなく
ただ従属を強いられるのみ。映画はそうした背景の説明に半分以上の
上映時間を割き、その閉鎖的な身分社会は行き過ぎた資本主義のなれ
の果てなのか、現代社会の写し鏡のようだ。かなり歪んではいるが。

やがてハンガー・ゲームが開始、カットニスはサバイバルキットを手
にすると森に隠れ、殺し合いを傍観する。その後の展開は、カットニ
スが勝者になるのも含めてある程度予想はつくが、監視している組織
がやたらゲームに介入したり、スポンサーが差し入れしたりするのに
は鼻白む思いだった。

お勧め度=★★(★★★★★が最高)

「ハンガーゲーム」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20121002

を参考にしてください。

本日はもう1本

「ライク・サムワン・イン・ラブ」 です。

こちらの都合にはお構いなく、いきなり貴重な時間を奪っていく。火
急の用ではないと無視してもメッセージが残され、返答しなかったこ
とに小さな罪悪感を植え付ける。電話というツールの、かける方の傍
若無人さに振り回される受信者の迷惑が再現されるエピソードの数々
がリアルで楽しめた。忙しいのに用件を押し付ける、一度応答すると
なかなか切れない、そんな電話を受けてしまった人々のうろたえぶり
が滑稽だ。映画は女子大生エスコート嬢と客の老学者の夜と昼に密着
し、ままならぬ日常の1コマを切り取る。

デリバリー風俗嬢のアキコは恋人・ノリアキとのトラブルを抱えたま
ま引退した大学教授・ワタナベの部屋に派遣される。ワタナベはアキ
コに亡き妻の面影をみて丁寧にもてなすが、アキコは眠ってしまう。

翌朝、ワタナベはアキコを大学まで送るが、待ち伏せていたノリアキ
はワタナベをアキコの祖父と思い込んで話しかけてくる。粗暴な男だ
が、仕事や結婚に対してはしっかりとした考えを持つ筋の通った一面
に、ノリアキに対する先入観が覆されていくが、当然アキコとの本当
の関係は明かせないでいる。そして一度ついた嘘を破綻させないため
にさらに嘘を重ねていく。その危うさが奇妙な緊張感を生んでいた。

ところが、多用される長まわしのカットはひたすら冗漫な上、彼らの
会話には無駄な"間"が多い。このアンバランスに人生の不条理を感
じさせようとする監督の狙いは成功しているとは思えなかった。

お勧め度=★★(★★★★★が最高)

「ライク・サムワン・イン・ラブ」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20121003

を参考にしてください。