2012年10月11日木曜日

こんな映画は見ちゃいけない!(10/11)

本日、とりあげる作品は

「マヤ ─ 天の心、地の心 ─」 です。

緑に覆われていた大地は赤茶けた土がむき出しになり、密林だった山
は雑草しか生えていない。井戸は涸れ、清流は汚され主食の穀物です
ら奪われていく。かつて天文学を発達させ正確な暦を作るために壮大
なピラミッドを建造した中米のマヤ文明、スペイン人らの侵略によっ
て簒奪された民族のわずかな生き残りは山中で細々と暮らしていたの
に、今またグローバリゼーションの波に住処を追われようとしている。
映画は文明社会と距離を置き、自然と神と精霊と祈りの中で静かに生
きるマヤ族の人々の現在をレポートする。

トウモロコシの原産地であるメキシコ高原地帯に住むマヤ族は遺伝子
組み換えトウモロコシの脅威にさらされている。グァテマラの高地で
は金鉱山の開発が進み、現地のマヤ族は環境汚染に苦しんでいた。

黒、白、茶、赤など、黄色い粒がそろったものしか流通していな日本
とは違い、多様な色の粒が美しい宝石のような輝きを放つマヤのトウ
モロコシ。マヤ神話にある"神がトウモロコシを人にした"という一
説にある通り、彼らにとっては聖なる作物なのだ。それを多国籍企業
は単なる金もうけの手段として遺伝子レベルで改良する。金鉱山では
シアン化合物が住民の健康を蝕んでいても、国も企業側も知らぬふり。

そんな現実を、映画は決して扇情的にならず、マヤの人々に淡々と現
状を訴えさせることで、先進国の豊かさの代わりに何が犠牲になって
いるのかを考えさせる。

お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

「マヤ ─ 天の心、地の心 ─」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120921

を参考にしてください。

本日はもう1本

「新しい靴を買わなくちゃ 」 です。

おばさんになっても、結婚・離婚・出産歴があっても、女として現役
でいたい。物語はそんな中年女性の願望、というか妄想を臆面もなく
爆発させる。アートのようなしっとりとした質感で再現されたパリの
街並み、イケメンの好青年との偶然の出会い、そして忘れかけていた
胸の高鳴りに己の欲望を再認識していく過程は、まさに大人のおとぎ
話。たまゆらの恋と分かっているからこそ素直になれる、ここまでス
トレートに"男が欲しい"気持ちをさらけ出すヒロインにはむしろ清
々しさすら覚えた。

パリで迷子になったカメラマンのセンは、フリーペーパーの記者・ア
オイと知り合う。食事を共にし、バーに行くとアオイは酔いつぶれ、
アパートに送ったセンはそのままアオイの部屋の浴槽で夜を明かす。

もはや手垢が付いたような展開だが、2人の間で交わされる会話のテン
ポが良くて決して飽きさせない。また、アオイの心理を投影するよう
な絶妙のカメラワークは、時にブレ、ピントが外れ、ためらいやとき
めき、寂しさや不安、喜びとため息といった繊細な感情を代弁する。

一方で、映画はセンの妹・スズメに試練を与え、女の魅力を身に着け
るにはたくさんの涙を流す必要があると訴える。恋を成就させるため
には人生の経験が最大の武器、アオイとスズメの対比は、恋愛の土俵
においてすでに終わっているとされてきたアラフォー女性から20代の
"現役"女性への挑戦状なのだ。。。

お勧め度=★★★(★★★★★が最高)

「新しい靴を買わなくちゃ 」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20121008

を参考にしてください。

本日はもう1本

「ツナグ」 です。

伝えられなかった思い、知っておきたかった答え。死んでしまった者
たちとの間に横たわる溝は、生きている者を苦しめる。だが、一度に
限りわだかまりを解くチャンスを与えられたら、どんな言葉を用意す
るべきか。物語は死者を甦らせる能力者になるべく修業する青年が、
他人の人生に干渉せざるを得ない苦悩を描く。誤解が解けて幸せにな
る人もいる、更なる悩みを背負い込む人もいる、また願いが叶う人も
いる。彼らを見つめながらも、自身は両親の死に深く傷ついている。
優しさのみでは決して幸せになれない、しかし真実を知ることで人間
は解放される、それらを体験して成長いていく主人公がいとおしい。

死者仲介人「ツナグ」の後継者見習いの歩美は、亡母に権利書のあり
かを聞きたい男の依頼を受ける。その後、親友が事故死した同級生、
失踪した婚約者を忘れられない男などに面会をセッティングする。

演劇部の女高生・嵐と御園のエピソードが、彼女たちの複雑な心理を
象徴していた。御園と二人になった嵐は謝るだけで何をしたかは言え
ない、一方で御園の寛容は嵐を責め続ける。女同士の友情と憎しみが
入り混じった不可解な感情がミステリアスだった。

ただ、行方不明になったキラリを待ち続ける土屋のパートは出会いか
らしてバカげている。救急搬送に付き添ったならキラリの身分証明書
くらい確認するはずだろう。リアリティを持たせるためのディテール
があまりにも杜撰すぎ、開いた口がふさがらなかった。。。

お勧め度=★★(★★★★★が最高)

「ツナグ」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20121009

を参考にしてください。