2012年9月13日木曜日

こんな映画は見ちゃいけない!(9/13)

本日、とりあげる作品は

「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望」 です。

中国人が誤発注した大量の缶ビールを必死で隠したり、事件に陳腐な
名をつけた挙句へたくそな字で清書したり、再雇用指導員が弁当代わ
りに勝手にビュフェを開いたり…。これらのシーンは、もしかしたら
大笑いする「お約束」なのか。TVシリーズからの思い入れのあるマニ
アならば、それぞれのキャラクターがいかにもやらかしそうな"愛す
べき失敗"と、目を細めているにちがいない。

湾岸署管内で銃殺事件が連続して起きる。犯行に使われた拳銃は押収
品で、上層部は真相のもみ消しと早期解決のため、鳥飼を湾岸署に送
り込んでくる。青島たちは少ない情報の下で捜査を続けざるを得ない。

鳥飼は容疑者をでっち上げ、青島に誤認逮捕・強制自白の濡れ衣を着
せ退職に追い込もうとする。やがて6年前の少女誘拐殺人事件との関わ
りが明らかになっていくが、私怨を晴らすために無関係な青島を巻き
込むのはいかがなものか。所詮、警察庁若手キャリアが唱える正義な
ど、警察を自分たちの居心地の良い組織にしたいだけ。そんなエゴに
振り回される青島たちは哀れを超えて滑稽に見えてくる。今回も事件
そのものよりも、警察内部の人間関係、歪な命令系統、保身に走る幹
部と泥をかぶる下っ端という構図に変わりはない。

それにしても、退職したその夜に東京を引き払って田舎に帰ろうとす
るすみれの行動の素早さには唖然としたが、バスジャックまでしでか
すとは。あんな荒唐無稽なオチでもファンは納得するのだろうか。

お勧め度=★★(★★★★★が最高)

「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120910

を参考にしてください。

本日はもう1本

「莫逆家族─バクギャクファミーリア─」 です。

高校生の息子に見下され、妻との仲もギクシャクしている。黙々と肉
体労働に従事しているが、心の澱はたまっていくばかり。ままならな
い日常、これも人生とあきらめかけている。物語は、そんな男が昔日
の燃えるような魂を取り戻そうと共に暴れたかつての暴走族幹部に声
をかけ、熱き血をたぎらせて闘う過程を追う。ケンカに明け暮れてい
たあのころ、仲間を家族同様に守るのが己の生き方と定め、固い結束
を誓った。その思いは皆、今も変わらないのだろうか。映画は、中年
の域にさしかかったオッサンたちの雄姿を通じ、筋を通す大切さを訴
えていく。

建築現場で働く鉄の元に暴走族時代の親友・浩介が現れ、あつしの娘
・真琴が暴行されたと伝える。鉄はばらばらになっていたメンバーを
招集し、暴行犯を捕まえた上、あつしにケリを付けさせる。

それがきっかけでまたつるみはじめた彼らだったが、元総長・ナベの
出所で運命が暗転する。当時、ナベの弟を死なせたことからナベに脅
える五十嵐が恐怖のあまり我を失ない、かろうじて弟分の緒方に止め
られる。

だが、緒方が命がけで五十嵐のトラウマを取り除いたにもかかわらず、
逆に五十嵐はより凶暴化して、狂気を湛えたチンピラになってしまう。
この五十嵐というキャラクター、原作でどう描かれているのか知らな
いが、イマイチよくわからなかった。

お勧め度=★★(★★★★★が最高)

「莫逆家族─バクギャクファミーリア─」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120912

を参考にしてください。

本日はもう1本

「白雪姫と鏡の女王」 です。

胸に秘めた情熱があふれ出す濃厚な赤、権力を誇示するきらびやかな
金色、強固な意志がほとばしる青、無垢な弱さをさらけ出す黄色etc.
登場人物の心情を象徴する鮮やかに彩られたコスチュームの数々は、
それだけでまばゆいばかりの光沢を放つ。ゴージャスと洗練が表裏一
体となったこの作品の衣装デザインにおいては、白を基調にしたドレ
スでさえヴィヴィッドな印象を受けるほど強烈、カラフルで心が浮き
立つおとぎ話に命を吹き込んでいる。石岡瑛子が作り上げた世界観は、
映画における衣装デザインの重要さをあらためて認識させてくれた。

女王に父の王国を乗っ取られ軟禁されていた白雪姫は、18歳の誕生日
に城を抜け出し、森の小人に逆さ吊りにされた王子と従者を助ける。
女王の舞踏会で再会したふたりは、運命的なときめきを覚えていた。

短気で陰険、毒舌家で負けず嫌いの女王が、王子の気を引くために必
死でアンチエイジングに励む姿が痛ましい。シワやシミ・たるみを取
る魔法なんかない、あるのは日々のスキンケアという現実をコミカル
に見せてくれる。一方の白雪姫は"雪のような白い肌と漆黒の髪"を
持つ輝ける18歳、でも太くて濃い眉毛に野暮ったさを残している。

とうが立ったオバハンが失われつつある美貌にしがみつく滑稽さと、
怖いもの知らずの小娘の気の強さ、さらに望めば何でも手に入るがゆ
えに本当は何が欲しいのかわからない王子を絡ませ、人生の意味を見
失いがちな21世紀の現代人を皮肉っているようだ。

お勧め度=★★*(★★★★★が最高)

「白雪姫と鏡の女王」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120802

を参考にしてください。

本日はもう1本

「バレエに生きる〜パリ・オペラ座のふたり」 です。

まるで月面でジャンプしているような滞空時間の長さとしなやかな着
地、操り人形のように両足を細かく複雑に交差させるステップ、指先
から爪先まで使って優雅な動きで体現する喜怒哀楽。その肉体の柔軟
さと軽さはもはや重力を凌駕した境地に達し、人間業とは思えないほ
どの浮遊感を醸し出す。パリ・オペラガルニエ、バレエの聖地ともい
えるこの場所でかつて最高峰をきわめた2人のダンサーが語る彼らの過
去は、20世紀後半のバレエ界を象徴する。

幼いころオペラ座で「ジゼル」を見たピエールはダンサーへの道を選
ぶ。バレエ教室に通っていたギレーヌは、バレエ映画を見てバレリー
ナになる決意をする。ふたりはピエールのバレエ団で出会い結婚する。

映画は別々に収録されたふたりのインタビューをもとに、膨大なアー
カイブを紐解いていく。ピントの甘い古いモノクロフィルムから21世
紀の最新パフォーマンスに至るまで、それは映像として記録に残って
いるバレエの歴史そのもの。時代が下るにつれ他のジャンルのダンス
の影響を受けているのが分かる。

もちろん半世紀近く前の振り付けでも、当時のモードを取り入れてい
るのだろう、それでも現代の感覚から見れば"古典的"という感じが
してならない。あらゆる芸術表現に共通することだが、バレエの進歩
もまた、基礎は守りつつもより斬新なアイデアと高度なテクニックへ
の挑戦の積み重ねなのだ。

お勧め度=★★(★★★★★が最高)

「バレエに生きる〜パリ・オペラ座のふたり」
についての詳細は、

http://d.hatena.ne.jp/otello/20120913

を参考にしてください。